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このレコード何とかしてくれ

1972年ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団来日公演の知られざる録音

 

1、発見編〜なんなんだこれは?

 日本のオーケストラの定期演奏会に出かけて、その演奏会が放送されるわけではないのに、天井からマイクが吊り下がっているのを見たことがありませんか?だいたいそういう時は、放送や商業用ライヴ録音で見られるような、舞台上でのマイクの乱立もない。これは発売を目的にオーケストラが録音しているのではなく、オーケストラの“記録用”として録音されているものです(のちにそれを使ってCD化するということもありますが)。これら記録用録音はオケの倉庫の片隅に大量に残っていると言われています。

さて場所は変わって、日本のオケではなく、海外オーケストラの来日公演。会場に出かけてみると、天井からマイクが吊ってあった。「すわNHKあたりの録音か?」と思う。しかしマイクの数からして放送用とはとても思えない。もちろん演奏会後それらしき放送がされた形跡もない。

…という光景に私自身はお目にかかったことがない。しかし実はそういうことがある(あった)らしい。

“それ”は神保町の有名な某中古レコード屋で見つけた。そのレコード屋のフロアの片隅。「外国人演奏家の日本録音」という仕切りの一角。漁っていたら変なレコードが出てきた。ジャケットは白いボール紙で、中央部はレーベル面が見えるように円形に切り取られている。ジャケットの右上にはなにやらボールペンで書いたらしい手書きの文字で以下のように書いてある。

「マル秘
ロジェストベンスキー 指揮
モスクワ放送交響楽団
ショスタコーヴィチ作曲“交響曲第15番”(本邦初演記念自家製限定盤)
1972年5〜6月来日中に録音」

んん???

何だかわからないのでボール紙の切り取られた部分に見える、レーベル面を読んでみる。

A面には、

日ソ両国歌
ショスタコーヴィッチ:交響曲 第15番 Op.141(日本初演) 第1〜3楽章

B面には

残りの第4楽章。
ベルリオーズ:幻想交響曲 より 第5楽章 ほか

とある。

演奏者はロジェストヴェンスキーとモスクワ放送交響楽団らしい…

はああああ????

あまりの内容に唖然とした。これでもロジェストヴェンスキー・コレクターの端くれである(コンプリーターではなく、ロジェヴェンの“珍盤”コレクターなのだが)。ロジェストヴェンスキーのショスタコーヴィッチの15番は、ソ連国立文化省響(メロディア)との録音しかないはずなのはすぐ頭の中で検索を完了。オケがモスクワ放響とある上に、交響曲15番のクレジットのあとに「First Performange in Japan」である。

1、ロジェヴェン指揮
2、モスクワ放響
3、ショスタコーヴィッチの交響曲第15番
4、日本初演

ここでこの手に詳しい人だったらピンと来る。1972年ロジェヴェンがモスクワ放響が率いて来日公演を果たしたときに、このコンビがショスタコーヴィッチの15番の国外初演(諸説あるようだが、いずれにしても日本初演)を果たしているのだ。これまでこの音源が音盤化したことがあるという話はまったく聞いたことがない。

ついでにロジェヴェンの「君が代」まで聴けるかもしれない。これも実は知る人ぞ知る伝説の演奏なのだ。何故かそれを覚えていて、そのことにも思い当たった。

この内容がほんとだったらどエライことになる。

値段がもこれが本当だったら考えられない安い金額だったので即決購入(興奮してたのでその場で聴かせてもらうということまで頭が廻らなかった〔笑〕)。

そして自宅への帰路、自分が手に入れた盤についてよ〜く考えてみた。レーベル面の表記は本当に本当なのか?レーベル面周縁に見られる「SOUGOU BUNKA SYA」とはなんなのか?いろいろ質問が湧いてくる。いずれにしても実際に聴いてみないことにはぜんぜん分かるわけがない。

期待の反面で、
これはどこぞの金持ちで酔狂なマニアが、演奏会場で膝録りした、もしくはエアチェックした音源を、せっかくの日本初演なのだからとレコードにプレスして、友人に配ったのではないか?「SOUGOU BUNKA SYA」というのは、レコードをプレスした会社なのだろう。…ってことは音質はひどいんだろうな。
程度のものじゃないかとは思っていた。

ところが違った!

 

2、探求編につづく。

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