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メロトロン(MELLOTRON)の洪水

メロトロン MELLOTRON とは

メロトロン mellotron M400

メロトロンは1960年代に発明された鍵盤楽器。
とはいえ鍵盤楽器にも色々あって、スチール弦をハンマーで叩いて音を出すピアノやパイプに風を送って音を出すオルガンといったアコースティック楽器とは 全く別物であるのは勿論、回転させたトーンホイールの発振を増幅するハモンド・オルガン等の電気楽器とも違うユニークな音源であるのがメロトロンの 面白いところ。
その音源とは何とストリングスやブラスなど楽器音を録音した磁気テープで、このテープが鍵盤の数だけセットされていたわけです。 なので、このメロトロン。サンプラーの元祖みたいに言われたりしてます。

メロトロンの仕組みはまさにメカニックな感じで、押鍵すると仕込まれたテープが再生を始め、離鍵すると再生が終了しテープをバネでもって強制的に巻き 戻すという力技がスリリングです。さらにスリリングなのがテープの長さの関係で7〜8秒しか連続再生できない所。白玉の演奏はドキドキもんでしょう。 さらに、押鍵してもテープ走行がすぐには安定せず音の立ち上がりが悪かったりして、これが逆にメロトロン独特の音色キャラクターになってたりするもんだから 始末が悪いです。しかもテープや磁気ヘッドは基本的に消耗品な上、テープが熱に弱い為照明等で温度の上がるステージでの音程調整の難しさから、 メロトロンがプレイヤー達に与えるストレスも相当あったようです。
実際メロトロンとエンドース契約していながら、腹を立てて燃やしてしまったリック・ウェイクマンみたいな豪傑もいます。
しかしその反面、プログレ系のミュージシャンにことのほか愛用されたのも、メロトロンのマニアックなメカから連想される先進性とチャレンジ精神が、そのサウンドと同等かそれ以上の魅力的なものとして彼らには映ったからではないでしょうか。
我々リスナーの立場からしても、メロトロンが醸し出す何ともいえない独特の味わいが何物にも代えがたい魅力なんですよね。


メロトロン MELLOTRON 使用アルバム

リック・ウェイクマン

メロトロンの洪水

KING CRIMSON / In The Court Of The KingをアマゾンでチェックKING CRIMSON / In The Wake Of PoseidonをアマゾンでチェックKING CRIMSON / Redをアマゾンでチェック KING CRIMSON / In The Court Of The King 1969
KING CRIMSON / In The Wake Of Poseidon 1970
KING CRIMSON / Red 1974


メロトロンの話をする上で避けては通れないKING CRIMSON。
あくなきメンバーチェンジと音楽性の変遷にもかかわらず、絶えずメロウな側面も併せ持っていたKING CRIMSONの必需品とも言えるメロトロン。 1stの#3 Epitaph、#5 The Court OF The Crimson King、2ndの#4 In The Wake Of Poseidon、REDの#5 Starlessあたりは俗に言う「メロトロンの洪水」。涙無しには聴けませんね。
KING CRIMSONのレビュー


GENESIS / FoxtrotをアマゾンでチェックENGLAND / Garden ShedをアマゾンでチェックANEKDOTEN / Vemodをアマゾンでチェック GENESIS / Foxtrot 1972
ENGLAND / Garden Shed 1977
ANEKDOTEN / Vemod 1993

メロトロンをKING CRIMSONから譲り受けたGENESIS。Foxtrotの#1 Watcher Of The Skiesではイントロから全開です。

ENGLANDにとってもメロトロンは必需品。アンサンブルの中で上手にサウンドに溶け込ませつつ、ここぞの所では洪水も辞さない潔さがナイスです。

スウェーデンのANEKDOTENはKING CRIMSONのフォロワーなんて言われてますが、独自の解釈による叙情とヘヴィネスの融合で現代風なプログレを実践しています。1stの日本盤ボーナス・トラックSad Rainはまさにメロトロンの洪水。
GENESISのレビュー ENGLANDのレビュー ANEKDOTENのレビュー


爽やかなメロトロン

LED ZEPPELIN / Houses Of The HolyをアマゾンでチェックKESTREL / KestrelをアマゾンでチェックANEKDOTEN / Gravityをアマゾンでチェック LED ZEPPELIN / Houses Of The Holy 1973
KESTREL / Kestrel 1975
ANEKDOTEN / Gravity 2006
幅広い音楽性のLED ZEPPELINもHouses Of The Holyの#2 Rain Songでメロトロンを使用。清廉な楽曲に静寂と格調をもたらしてます。
KESTRELはPOPな中に突如現れるメロトロンが神々しささえ湛えてます。
再度登場のANEKDOTEN。Gravityの#2 Ricochetでのスペイシーなメロトロンは降り注ぐシャワーのような爽やかさです。
LED ZEPPELINのレビュー KESTRELのレビュー ANEKDOTENのレビュー


ミステリアスなメロトロン

LANDBERK / Riktigt トktaをアマゾンでチェックMORTE MACABRE / Symphonic HolocaustをアマゾンでチェックPAATOS / Timelossをアマゾンでチェック LANDBERK / Riktigt Äkta 1992
MORTE MACABRE / Symphonic Holocaust 1998
PAATOS / Timeloss 2002
PAATOSの母体バンドLANDBERKは土着性の強いサウンドに幽玄なメロトロンが良く合ってます。
PAATOSとANEKDOTENのメンバーによるプロジェクト・バンドMORTE MACABREはホラー映画のサントラをカヴァー。こちらも冷ややかなメロトロンの感触がオカルト/ホラーな雰囲気を増強してます。
PAATOSは全般的に霧のようにメロトロンを使用してますが、ここぞの場面では大放出してメランコリックに迫ります。Timelossの#3 Téaはメロトロン・ファン必聴。
LANDBERKのレビュー MORTE MACABREのレビュー PAATOSのレビュー


サイケなメロトロン

mellotron mechanic

CZAR / CzarをアマゾンでチェックKULA SHAKER / Kをアマゾンでチェック CZAR / Czar 1970
KULA SHAKER / K 1996
音程が不安定なメロトロンですが、そのフラフラしたピッチがサイケデリックなCZARの出すヘヴィ・サイケなサウンドにジャスト・マッチしてます。
インドっぽいテイストを上手に現代風グルーヴ・ロックに取り入れたKULA SHAKER。Kの#9 Tattvaではメロトロンを上手く導入し、エキゾチックな雰囲気をセンス良く醸成してます。

CZARのレビュー KULA SHAKERのレビュー


フォークなメロトロン

SPRING / Springをアマゾンでチェック SPRING / Spring 1971

トリプル・メロトロンとの風評に乗ってついつい買っちゃうSPRINGですが、別に分厚く迫ってくるわけでは無く、フォークをベースにした歌メロ中心のサウンドを彩るそのセンスこそが聴き所だったりします。

SPRINGのレビュー



ヘヴィ・ロックとメロトロン

mellotron markU

GRACIOUS / Gracious!をアマゾンでチェックBLACK SABBATHをアマゾンでチェックOPETH / Ghost Reveriesをアマゾンでチェック GRACIOUS / Gracious! 1970
BLACK SABBATH / Vol.4 1972
OPETH / Ghost Reveries 2005

ハープシコードが印象的なクラシカル要素を取り入れたヘヴィなサウンドを聞かせるGRACIOUS。混沌の背景に広がるメロトロンが清涼感抜群です。
おどろおどろしいイメージの強いBLACK SABBATHですが、アルバムには必ず寂寥感のある静かな曲を入れてました。Vol.4のバラード #3 CHANGESのバックでは清らかなメロトロンが使用されておりアルバムの隠れたハイライトとなっています。
デス/ゴシック/プログレの要素を持つヘヴィメタル・バンドOPETHは70年代ロックマニアのリーダー ミカエルの趣味でハモンドやメロトロンが普通に使用されています。21世紀最強のプログレ曲#1 Ghost Of Perditionを是非聴いてみて下さい。

GRACIOUSのレビュー BLACK SABBATHのレビュー OPETHのレビュー


現代のプログレとメロトロン

THE FLOWER KINGS / RetropolisをアマゾンでチェックLANA LANE / Love Is An Illusionをアマゾンでチェック THE FLOWER KINGS / Retropolis 1996
LANA LANE / Love Is An Illusion 1995

70年代からスウェーデンのプログレ・バンドKAIPAで活躍していたロイネ・ストルトのバンドFLOWER KINGSでも数あるキーボードの内の一つという感じで普通にメロトロンが使用されてます。それほど使用頻度は高くありませんが、使うときのツボの心得方はさすがです。Retropolisではアルバム冒頭からニンマリしてしまいますね。
LANA LANEはサウンドのカギを握るエリク・ノーランダーのプログレ趣味に基づき#3でセンス良く使用されてます。

THE FLOWER KINGSのレビュー LANA LANEのレビュー


メロトロン MELLOTRON のエミュレーター

ローランド SRX07 ROLAND / SRX-07
最近の作品で聴かれるメロトロン・サウンドはほとんどがサンプリングされたものなんじゃないでしょうか?実際の制作状況は不明ですがライブで聴かれるサウンドはまず間違い無くサンプルでしょうね。 メロトロン自体サンプルの音ネタを使っていたというのに、それがさらにサンプリングされるというのも面白いですね。 ま、そんなわけで楽曲制作に興味の無い人にはどうでも良い話かもしれませんが、世の中にはそんなメロトロンのサンプル(エミュレーター)が色々あるみたいです。 私はMIDI音源でローランドのXV-5050というヤツを持っているんですが、こいつのエクスパンション・ボード(拡張音色ボード)のSRX-07というやつを数年前購入してみました。 自分はギタリストなんで雰囲気だけ味わえればOKなんです。


M-TRON M-AUDIOバーチャル・ビンテージ・キーボードM-Tron。
スタンドアローンやLive 4、Cubase、Logic、GarageBand、SONAR、Digital Performer、ACID、Pro Tools LE/TDM/M-Powered等のプラグインとして使用することもできます。
試聴はこちら


MEMOTRON Manikin Electronic / MEMOTRON
ドイツの新進メーカーが開発したMEMOTRON。
鍵盤数(35鍵)、再生時間8秒などスペックに加え外装やツマミの位置までもメロトロンModel400そのまま。
音色はCD-ROMから3つの音色を選択してA/B/Cのトラックにロードします。M-Tronの音色もロード可能だそうです。
売価約¥360,000(2008年12月現在)。



M-TRON Manetron(マネトロン):メロトロン・シミュレーター
iPhone/iPod touchのアプリにメロトロン・シミュレーター、その名もManetron(マネトロン)が登場。
シリアルナンバー714番のM400S からサンプリングしたというこのマネトロン。ループなしでテープエンドの微妙な音切れ感も収録したり、再生も約7秒間だったりと、こだわりのスペックが満載。
しかも、たったの¥350!





メロトロン・レジェンド~チェンバリンとメロトロンの数奇な物語 DVD
メロトロン・レジェンド~チェンバリンとメロトロンの数奇な物語 DVD

プログレ三種の神器 メロトロンの歴史をミュージシャンや開発者へのインタビューで綴るドキュメンタリー。
イアン・マクドナルド(KING CRIMSON)、トニー・バンクス(GENESIS)、マイク・ピンダー(MOODY BLUES)、トーマス・ジョンソン(ANGLAGARD)らプログレ界は勿論、意外な所ではリック・ニールセン(CHEAP TRICK)や、最近の人ではミカエル・オーカーフェルト(OPETH)などが登場。
鍵盤全てに実際の楽器音を録音した磁気テープがセットされており、押鍵するとそのテープが8秒間再生するというサンプラーの元祖みたいなメロトロン。
リズム伴奏の音も用意されていたりして、今で言うとヤマハのエレクトーンとか、カワイのドリマトーンみたいな感じでしょうか。元々は(金持ちの)ご家庭用キーボードとしてハロッズなどのデパートで売り出されたという。しかし一般客には全然売れず、開発者の意に反して新しい機材に敏感なプロのミュージシャン達が使い出した。
ところが色んなミュージシャンが言ってますが、使える音はほんの一握り。ということで我々が色んな名盤で聴くアノ音が残ったんでしょう。
また当初ご家庭用を想定していた為、ツアーで運搬するとか、照明で温度が上がるステージ上で使うなどのヘヴィ・デューティな対策が施されておらず、故障やピッチ調整の手間などミュージシャン泣かせの楽器でもありました。

そんなメロトロンの魅力と栄枯盛衰を記録した資料価値の高いDVDではありますが、唯一の不満はせっかくミュージシャンが出演しているのにその使用楽曲が流れないこと。
権利関係とか難しい面があったのだろうと容易に想像できますが・・・・ちょっと残念です。





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