2015.9.14

ご挨拶 生き抜く力

 9月も半ばに差し掛かりました。今年の夏は、例年に比べとても短く、一気に秋を迎えたという感じです。「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、いつもこの頃はまだ残暑が厳しく、移ろう季節との間にギャップを感じることも多いのですが、今年は秋雨前線が早々に停滞し、その影響で全国各地、早い時期から大雨に見舞われました。今年は台風の発生が例年に比べてとても早く、回数も多いようなのですが、このたび、東海地方ー北陸地方を縦断した台風18号(が変化した低気圧)と、日本の東側を北上した台風17号は、お互いが影響しあって、北関東、東北地方に記録的な豪雨をもたらしました。いくつもの河川が決壊、瞬く間に一帯の集落は浸水し、今も多くの方々がライフラインを絶たれたまま、不自由な避難生活を強いられています。

 連日の懸命な救出・捜索活動にも関わらず、15名の方は未だ安否不明のままです。大気の不安定な状態はまだ続いており、排水作業が難航する中、昨日は新たな河川が決壊するなど、予断を許さない深刻な事態が続いているようですが、一刻も早く、一人でも多くの方が救出されますよう、また、これ以上、被害が広がらないことを祈るばかりです。

 天変地異というものはどんなにがんばっても防ぎようがなく、とにかく被害に遭わないよう、被害が大きくならないよう、ひたすら祈ってやり過ごす以外ないというのは、何ともやるせなく、心許ないものです。近年、国内外を問わず、「今まで経験したことがない災害だった」という言葉をよく耳にしますが、国内の気象現象に限って言えば、ゲリラ豪雨、竜巻の発生、台風の増加とその規模の拡大 などがそれにあたるでしょう。けれども、これらの現象は、長期にわたる過去の観測データを読み解けば、実は数百年という単位で繰り返されている現象だそうで、地球は今まさに、気象激変の時代に差し掛かったとも言われているようです。

 日ごとメディアに映し出される、新たな被災地の広範囲に渡る変貌ぶりは、東日本大震災の津波による大被害を彷彿とさせ、わずか4年半で再びこのような大惨事が国内で起こってしまった現実に、心は重く沈み、どうしようもない気持ちでいっぱいになります。3.11 で被災された方の中で、新たな復興の地として、今回の被災地を選ばれた方もいらっしゃるようで、容赦ない自然の猛威にこの世の不条理を思い、とても哀しくなります。このような大惨事は今後、日本の至る所でいつでも起きうるという専門家の見解に対し、漠然とした危機意識の高まりとともに、無力感ばかりが募ります。

 けれども今、私たちがこうして生きているという現実、文明社会が連綿と続いてきたという事実は、まさしく人類が危機的状況を何度も乗り越えてきたという証であり、現代もまたその営みの途上にあるのだという希望の礎でもあります。そのことを再認識するだけでも、私たちの未来は大きく違ってくるのではないでしょうか。

 例えば近年、深刻さを増している地球温暖化は、異常気象の頻度や規模を拡大させるという観測結果が出ているようですが、これは文明社会への警告であると同時に、1つの救いの扉でもあるでしょう。対処する術を磨けば、危険を回避する可能性が高まるというのは、大きな希望です。そのような扉をいくつも発見することで、今後迫り来る危機的状況をうまく乗り越えていく。そのためには、全世界が人類の未来を信じて、一丸となって知恵を結集していかなければなりません。これまでも世界中の科学者たちは、そのようにしてさまざまな研究を行い、重大な発見を重ねてきたようですが、国家レベルでそれが実現すれば、もっともっと大きな成果を得ることができるはずです。

 先日、防衛庁によって出された来年度予算は5兆円、過去最大を上回る額だそうです。民間レベルで支援の輪が広がる一方で、国家間の関係においても、個人的な関係においても、見える形で見えない形で世界中がどんどん殺気立ってきている恐ろしさを感じる今日この頃、それを象徴するような政府の決定です。日本における国力増強の基準がどんどん軍事力に傾きつつある現実に、大きな衝撃と焦燥を覚えています。

 東日本大震災以来、日本各地で、大規模な災害が立て続けに起こり続けている現在、この困難な時代に最も必要とされるのは、ひとりひとりがどんなときも生き抜く力を磨くこと。それは、お互いを敵視し、武力でもって競い合う関係の中で築かれるものでは決してなく、お互いの価値を認め、尊重し協力しあう関係の中でこそ育まれるものだと思います。

 どんな国も、お互いを傷つけ、疲弊させる武力の関係は一刻も早く捨て去るべきで、日本こそが今までと同様、その道を率先して誘導し、各国が協力して共通の脅威(天変地異)にうまく対処していけたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。その際、資源の濫用や無謀な環境破壊は決して許されず、自然からの恩恵に常に感謝すること。その心遣いはきっと自然(地球)にも届き、これから先も文明社会との共存を望んでくれるはずです。


 これから迎える紅葉の季節。自然が私たちに大きな安らぎをもたらしてくれることを心から祈ります。