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Richard & Linda Thompson/I Want To See The Bright Lights Tonight/2004 Universal Island Records Ltd. IMCD 304/981 790-7



リチャード・トンプソンは間違いなく、英国最高のエレクトリック・ギタリストだ。1971年1月、フォークロックの開拓者フェアポート・コンヴェンションを去り、彼は独自の音楽的探求の旅に出た。続く1年間彼はレコーディング、ギグに没頭した。英国の素晴らしいシンガー/ソングライターたち―ニック・ドレイク、マイク・アンド・ラル・ウォーターソン、ジョン・マーチン、ゲイリー・ファー、ジョン・ケイル、ミック・ソフトリィ、そしてシェラ・マクドナルド―に加えてフェアポート仲間であるサンディ・デニー、イアン・マシューズ、そしてアシュリー・ハッチングスらと共に。これらアーチストたちとの仕事の間中、リチャードは自身のデビュー・アルバム、Henry The Human Fly(1972)のレコーディングを続けていた。この傑出したアルバムは、伝統に根ざしたイングランド音楽のコレクションとして今や古典となっている。陰鬱なミュージック・ホールとフォークロックをミックスした彼の巧みで大胆な楽曲群は、多くをブリテン諸島の伝統音楽にルーツを置いていた。また彼の詞は、以前彼が影響を受けた北米のロックンロールよりも、ウィリアム・ブレイク、ウィリアム・モリスを拠り所としていた。

かつてタイム誌に“最高の女性ロック・シンガー”と称されたリンダ・トンプソンは、グラスゴーからロンドンに通う学生であったが、すぐにフォーク・クラブに通い始めた。そこでサンディ・デニーと親しくなり音楽の世界に足を踏み入れた。まずリンダはワーロック・ミュージック社のサンプル・アルバムのためにエルトン・ジョンのレコーディングに参加し、ニック・ドレイク、マイク・ヘロンの曲を取り上げている。リチャードとリンダの出会いは、1969年フェアポートの傑作Liege & Liefのレコーディング中であったが、より親密になったのは1971年だ。リンダはHenry The Human Fly、ザ・バンチのRock On、サンディ・デニーのNorthstar Grassmanでバッキング・ヴォーカルを担当した。これらの作品に参加したのは、初期のアルビオン・カントリー・バンドのメンバーになる者たちだ。

二人の最初のアルバムにはリチャードに最も近い仲間たち―フェアポートからサイモン・ニコル、サンディのフォザリンゲイからパット・ソナルドソン、トレヴァー・ルーカスらが呼ばれた。ブルーのティミ・ドナルドもドラマーとして参加することになった。オーヴァーダブのセッションでは、実験的で中世風のロック・バンド、グリフォンからブライアン・ガランドとリチャード・ハーヴィーが招かれ、その独特なクルムホルンが加えられた。ヤング・トラディションからはロイストン・ウッドが彼のトレードマークである低音のヴォーカルを提供している。CWSマンチェスター・シルヴァー・バンドは、3曲で繊細な装飾を施しているが、最も注目すべきはWe Sing Hallelujahだろう。おそらく参加ミュージシャンのうち最も重要なのが、イングリッシュ・アコーディオンの名手、ジョン・カークパトリックだろう。彼の特徴的なアコーディオンは、トンプソンのレコード及びコンサートのサウンドに不可欠な要素となり、その後何年にも渡って続くこととなった。リチャードのカークパトリックとの最初のレコーディングは、独創性に富んだエレクトリック・モリス作品Morris Onであった。

仮タイトルであったHokey Pokeyのセッションは1973年春、慣れ親しんでいたチェルシーにあるサウンド・テクニクス・スタジオで始まり、ハウス・エンジニアのジョン・ウッドがリチャードと共同プロデュースした。結果でき上がったアルバムは、イングランドの荘厳なフォーロック作品として見事なお手本となった。しかし当時はレコード上の欠陥によりアルバムのリリースは1974年にずれ込んだ。この30年間アルバムの名声はどんどんと上がり続けてきた―例えばモジョ誌のGreatest Hundred Albums Ever Madeやローリング・ストーン誌のTop Hundred Albums(1967-87)に選出されている。

I Want To See The Bright Lights Tonightはリチャードの永遠のソングライター能力を示した、信じられないほどの大傑作だ。タイトル・トラックとCalvary Crossは今でもトンプソンの重要なレパートリーだ。アルバム全体に渡って、リチャードの風格ある控えめなエレクトリック・ギターと、リンダの聞けば二度と忘れられないような崇高なヴォーカルによって憂鬱で沈んだ歌が奏でられている。歌の内容は、没落、ホームレス生活、盗み、酔っ払いの一歩手前にある人間の、寂しくも美しい世界が描かれる。楽曲は全体に彼らの持つイングランド的な雰囲気が漂っていて、感受性に富み、絶望的な人間の状況に対しねじれた観察をしている。End Of The Rainbowは失望した子供の世界を歌っている:

ゆりかごの中では人生はばら色に見えた
でも子供部屋から外に目をやると
虹の端っこには何にもないんだ
もうそれ以上虹は伸びていかないんだ

リチャードは自分の曲について、全てに悲観的ではないという。“僕の曲の3ヴァース目には必ず希望が入っているよ。”しかしその全体の効果によって現実が白日の下に晒されるような気分になる。トンプソンの歌は自己に対する憐れみなど微塵もない絶望をもたらすが、逆説的に安心感や希望をリスナーに残していくのである。

I Want To See The Bright Lights Tonightは、元々アイランドから1974年4月にリリースされた(ILPS 9266)。このリマスターにあたって我々は3曲のボーナス・トラックを追加した。1975年9月7日、ロンドン、ラウンドハウスでのライヴで、メンバーは二人とカークパトリック、パット・ドナルドソン、そしてデイヴ・マタックスの5人だ。

デヴィッド・サフ、2004年1月


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