Welcome to my homepage


Mose Allison/Greatest Hits : The Prestige Collection/1988 Fantasy, Inc. OJC-6004



僕が初めてモーズ・アリソンの曲を聞いたのは1963年の11月で、それはアメリカ人の友人の“pad”(部屋)の中だった。“pad”っていうのは当時はまだ新しい言葉だったんだ。この友人はブルースに関しちゃ僕にとって最大の恩人になったね。僕は通っていたアート・スクールがあったイーリングのサニーサイド・ロード35の最上階で過ごすようになるまで、そういうのは全く聞いたことがなかったんだ。

そこにはテーブルの下に、低音を強調するために厚紙の箱に入ったスピーカー、それにそこいら中にコードが伸びた小さなアンプとテープ・デッキがあった。あと僕がそれまで見た中で一番たくさんのレコードが山積みにされていた。150枚くらいかな。つまらないものなんて1枚もなかったね。そのうちの3枚がモーズで、2枚が今はもう倒産してしまった英国のエスクワイア・レーベルからリリースされたやつだった。片方が圧倒的に刺激的なLP、“Back Country Suit”で、僕はそれを聞いた時、彼はカウ・カウ・ダヴェンポート(ブルースマン)みたいな黒人に違いないと思ったんだ(―Cow Cow Davenportって黒人だったっけ?)。

この男の声は天国から聞こえてきたね。すごくクールで、紛れもなくヒップで、混じりけがなくて、ガラガラ声のデルタ・ブルースマンからかけ離れていた。“よお、若いの・・・・・(Well a young man)” 僕は身を乗り出した。“ままならないね・・・・” 僕は興奮してきた。“近頃は全くひどいもんだ” 僕は昇天してしまった。ほとんど口も利けない状態になってしまった。アメリカ人の友人は(彼は僕にトイレを案内してくれた)、思わせぶりな目をしてニヤッと笑いながら、LP“Mose Allison Sings”を取り出したんだ。“彼はクソッタレ白人だったのか!” 僕は叫んでしまった。本物でクールでリラックスしてて、純粋でファンキーでヒップで、彼は僕にとって白人のヒーローになってしまった。

その日から僕は自分がモーズになったつもりで町を歩いていたね。“みんなは7番目の息子のうわさをする・・・・この広い世界でたった一人の・・・・オレがそいつさ”なんて歌いながらね。でも問題は、僕はそういう奴じゃなかったってことだ。僕はでかい鼻をしたかなりのダサダサ野郎だった。ビートルズみたいな前髪を垂らして、まだジミー・リードを何曲かコピーしていたんだ。でもとにかくモーズはオレのものだった。

僕は彼の抑制された叫びにすごくパワーを感じていた。彼は自分では理解していなかったに違いないけど、彼の声はまさしく静かなる巨人だと思ったね。男として、ミュージシャンとして、世界を変える力強さを持ちながら謙虚で無類の品性を持って、時の流れに身を任せて生きていくっていうようなね。

“なあ、生きていれば
その時がくるさ
ガキだってコットンのいっぱい詰まった袋をいいかげんに扱わないもんさ
でなきゃ肩を引っ掻いちまうか背中が折れちまう
生きていればできるようになるさ”

そう、これがモーズなんだ、これが。

―ピート・タウンゼンド


このライナーノーツは元々1972年にプレスティッジからリリースされた2枚組アルバム‘Mose Allison’(24002)のために書かれた。


ホームへ