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The Incredible String Band/I Looked Up/2002 Warner Strategic Marketing 7559 62760-2



ビン・ウィリアムソンと僕は、このアルバムでほとんど折半して曲を書いている。しかし曲が書かれた1969年は、ツアーとレコーディングで一緒に過ごした以外は、僕たちは400マイル離れたところに住んでいたという事実を認めざるをえない!彼とリッキーはウェールズに、僕はローズとスコットランドに住んでいた。僕たちはそれぞれ、他の3人のメンバーが歌を解釈して、装飾を加えて、発展させることができるのを念頭において曲を書いていた。

あのヒッピー・サマーの暖かさの中で、ISBのウエスト・ロジアン(スコットランド南東部)一派(マイクとローズのこと)は、“Black Jack Davy”、“The Letter”、“This Moment”、そして“Fair As You”を生み落とした。ローズと僕はそれらの曲を整えて、きっちりとした長さにまとめ上げた。その時代と旅にふさわしい衣服で着飾った僕たちは列車によじ登って、ウェールズの仲間たちに会うために出発した―彼らの方が派手な格好をしていたことがわかった!

僕はトラッド・ソングの“Black Jack Davy”のヴァージョンをいくつか聞いていた。全ては、ジャックポット(ダジャレのつもりじゃないよ)(jackpot…大金、ここでは女の子か?)を手にしたジプシーとは対照的な、気分を損ねた荘園領主の側から歌われていた。普通はマイナー・キーのかなり憂うつな曲調で、その中では媚びを売る農民が怒りと不満を表わしている。ブラック・ジャック・デイヴィの側からすれば、それは全体に異なったストーリーだ。それで僕は一人称で彼の側から書いて、より正確に彼の気持ちを反映するように、陽気な曲調にした。もともとのレコーディング・ヴァージョンでは、ロビンがヴァイオリンでハーモニーをつけて、ローズがフィドルでメロディをつけていた。リッキーはベースだった―ところどころで彼女は弾かなかったけど!

一方でローズは彼女のメインの楽器としてベースをプレイし始めていて、どんどんとすばらしくなっていた。彼女は“The Letter”で、デイヴ・マタックスとともにすごくタイトなリズム・セクションを作り上げている。その歌のメイン・テーマは、僕が実際にもらったファン・レターに基づいていた―それは本当に長く続いた個人的な悲劇を詳しく描写したものだった。血のしたたりがところどころについて、ことばが少なくなっていく手紙を想像できると思う。主人公のマリアは、さらに4〜5ページの手紙を書いて、それは1曲の歌にふさわしいものだった。

“This Moment”は、“ごめん、そっこうでミスった”についての歌。

僕たちは69年秋のイギリスとアメリカのツアーで、このナンバーをプレイした。リッキーと僕はステージでだんだんと遊ぶようになって、僕はこの曲で彼女が思いもしないところで、歌詞を加えたり、ノイズを出したりジェスチャーして見せたりして、彼女を笑わせようとしていた。このスタジオ・ヴァージョンはライヴ録りで、彼女はかなり早くから笑い出しそうなのが聞けると思う。彼女は耐え続けているんだけど、最後にはあの鐘のようなクスクス笑いが聞こえてきて、僕は彼女がすぐそばにいるような気持ちになって、それからもう彼女がいないことにとてもさびしい気分になる。

僕の4曲中、最後の歌が“バルコニーのジュリエット”気分のナイーヴなラヴ・ソングで、信じることを歌った“Fair As You”だ。僕は女の子2人のデュエットとして書いたんだけど、そのコーラスに僕が割り込む形になってしまった。ギンブリ(アフリカの4弦低音楽器)とフルートのロビンはとても効果的な陰影をつけている。シンプルな歌で、僕の中では誰もケチをつけなかったような1曲。“聴け!”―“Be Glad”マガジンの10月号でデヴィッド・キッドマンはそういった。歌詞は何をいいたいのか全く理解できない!―


My fairest love I live and learn the song the ring true,
僕の美しい恋人 僕は本物の歌を経験で知る

Are songs whose message is plain whose words are few.
そのメッセージは飾り気がなくて その歌詞はほんのわずかしかないそんな歌

Whose melodies smell of the pines
そのメロディはパインの香り

Love dwells between the lines.
愛は行間に存在する

Cast upon the air to fly when the words won't do.
歌詞が出てこないとき 外に飛び出してみよう

The sun he sings a song so fine to every day anew,
日の出には新たな日々を重ねるために 彼はすばらしい歌を歌う

But even he can't give to me a song as fair as you.
でも彼は君ほど美しい歌を歌えはしない

In forest moist at break of day, when wonder fills the air,
夜が明ける湿った森の中 それは驚きがあたりを満たすとき

I thought to pluck from out the dawn a melody so fair.
僕は美しいメロディを夜明けから抜き出そうと思った

Whose gracious form can match your own.
その優雅な姿は君にぴったりかもしれない

Your soul blessed in every tone,
君の魂は祝いの雰囲気に満ちていた

Coloured by the rainbow's pen in tints so rare,
とても珍しい七色のペンの色調に彩られた

The sun he sings a song so fine to every day anew,
日の出には新たな日々を重ねるために 彼はすばらしい歌を歌う

But even he can't give to me a song as fair as you.
でも彼は君ほど美しい歌を歌えはしない

Songs to give my heart some wings and soar like pretty birds that sing.
僕の心につばさをつけてくれる歌 それはさえずるかわいい鳥のように舞い上がる


話をウェールズに戻させてもらうと、そこでローズと僕はアルバムのための曲を取り出した。ロビンは薄明かりのなかでギターを取り出して、暗くて残忍な歌を歌いながら、途中で僕たちがそのムードに貢献できるようなパートを加えていった。これが彼の歌った歌だ―


Deep in the hollow gaol sleeps Lord Randal
むなしい監獄の奥でランダル侯が眠る

The mixed voices speak of bread
にごった声はパンを求めている

And the sheets that were scarlet and blue at his head
深紅色と青のシーツが彼の頭のところに

His heart like a cat drowns in a well
井戸でおぼれる猫のような彼の心


He thinks not of the girl he will not love
彼は愛するつもりのない女のことは考えない

He thinks not of the future or the past
彼は未来も過去も考えない

Blue lightning spikes the hills above the sea
青い稲妻が海の近くの丘を照らす

Where Kaza's ship set sail for otherwhere
そこではカザの船がどこかへ向かって出航する


There stands the chief with gold on his hair
黄金を頭につけたボスが立っている

Three fingers thick each link of coiled ore
3本の太い指には金の指輪

Speaks to his wife in white she answers not
白衣を着た妻に話しかけるが返事はない

He hurls his question angry to the gulls
彼は港の女たちに怒りをぶちまける


His wife strikes her mouth with a skull-like sound
彼の妻は頭蓋骨の音が鳴るほど自分の口を叩く

The bleeding image of her loss revolves above her mind
いまいましい敗北の思いが彼女の心をかけめぐる

With every line of its design
意図をもって刻みつけられた全てのしわ

An accusing eye that pierces Kaza's soul
カザの魂を貫き通す非難の目


The slaves row on beneath the dragon flags
ドラゴンの旗の下に続く奴隷の行列

His hearts recoils recall his red-haired son
彼の心は赤毛の息子を思い出してひるんでいる

Beneath the burning walls that he razed down
彼が破壊した燃える城壁の下で

His wife and he speak not as wine is brought
ワインがもちこまれても彼の妻と彼は口をきかない

A cup that seethes like black blood of wolves
狼の黒い血のようにあわ立つカップ

His wife's dagger is hidden in her dress
妻は短剣をドレスに隠し持っている

He drinks joyless to a dark sleep
彼はわびしく飲んでいる 深い眠りにつくために


The gaoler bangs the iron door
看守がドンドンと鉄のドアを叩く

Lord Randal wakes in pain
ランダル侯は不快感で目が覚める

He shakes his shackles in beaten gloom
彼は打ちのめされた暗がりの中 足かせを揺らす

Blood of his wounds is hard as coal
傷から出た血は炭のように固くなっている


The goaler leads him out
看守は彼を外に出す

Upon a blinding bright stair
目もくらむような明るい階段へ

He feels uneven turf beneath his feet
彼は足もとにでこぼことした芝生を感じる

The priest intones the priest intones the priest intones
司祭が祈りを唱える 司祭が祈りを唱える 司祭が祈りを唱える

The sword falls on his neck
ギロチンが彼の首に落ちる

The pain is boiling cold
痛みは全く感じない


They lay him in a tomb at break of the day
彼らは夜明けに彼の遺体を墓に横たえる

They close the earthen door upon his clay
彼らは遺体の上の土製のドアを閉める

The birds are plucking worms from the ground
鳥たちは地面から虫をつつき出している

Their feathers grey as mist on a cloudy morn
くもった朝のもやのような彼らの羽

Foresters burn branches from the sleeping trees
森の住人は枯れ木の枝を燃やす

The white sun turns to stone
白い太陽は石に変わる


My mother lies in labour nine days long
僕の母は9日間働きづめ

She called on Saint Bridget in her time
彼女は時間のあるときに聖ブリジットを訪ねる

I look out on the room of my birth
僕は自分の生まれた部屋から外を見る

With hangings rich of many strange designs
たくさんの不思議なデザインが施された飾り物が吊るされた部屋

The nobles stand with their wine cups in the room
部屋にはワイン・カップをもった貴族たちが立っている

Saluting me and she the King's queen
僕と女王の彼女にあいさつする

Already I am forgetting who I am
すでに僕は自分が誰だか忘れている

Already I've forgotten who I've been
すでに僕は自分が誰だったか忘れてしまった

My mother lifts me to her huge soft breast
僕の母親は彼女の大きく柔らかい乳房へと僕を抱き上げる

Her nipple like a berry both hard and brown
固くて黒いイチゴのような彼女の乳首

Her eyes look on me like waves of the sea
彼女の目は波立つ海のように僕を見下ろす

And with small lips the yellow milk I draw
そして僕は黄ばんだ乳をピチャピチャと吸っている


翌日、日の当たる外に出て、彼とリッキーは“When You Find Out Who You Are”をいっしょに歌った。僕たちは大きな農場の家にいて、誰もがそこに加わって住んでいた。

あの8月にウッドストックにいたことは、僕たちにとって1つの刺激だったし、僕たちは次の章に向けて歌を書くことに大きな熱意をもっていた。英国のそれぞれの場所に戻った僕らは、別々の生活を送れて、お互いがすぐに会いに来れるようなところを見つけようと決心した。僕たちはその11月にグレン・ロウに引っ越した―70年春に『U』の最初のステージをやったところだ。

間違いなく『I Looked Up』は過渡期のアルバムだ―でもひょっとすると、ストリング・バンドの最高の瞬間は、コンパスを置き忘れた時にやってくるのかもしれない。

マイク・ヘロン



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