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Fairport Convention/Full House/2001 Universal Island Records Ltd.IMCD285/586375-2



1970年は、このアルバムが企画され、レコーディングされリリースされた年だ。それからフェアポート本部であるリトル・ハダムのThe Angelの見直しと変化が訪れた年でもあった。初期の頃はバンド内に常に大変動があった―アルバム2枚続けて同じラインナップとしてスタジオに入ったことなんてなかった。

フロントマンの双子(必ずしも仲がいいとはいえなかったけど)のサンディ・デニーと錬金術師で団長のアシュリー・ハッチングスが、“リージ&リーフ”のリリース直後脱退したことで、よりロック色が強まることになったね。ある時期事実上、初めて僕らは全員男のバンドになったわけだ(ボーイズバンド?いやボーイじゃないな)。でもデイヴ・ペグの加入で新鮮な血が加わることになったね。彼のプレイはリズム・セクション・サウンドを変えたんじゃなくて、曲に対する全体のアプローチを変えてしまった。トラッドもオリジナルもね。

メンバー交代っていうのは、新メンバーと仲良くなるっていう問題ではなく、本当に団結力のあるチームを編成できるような関係を築くってことなんだ。音楽的にも社会的にもね。まだまとまってない頃は、感情を押し殺してたよ。早くツアーやスタジオ入りや、特にアメリカに行きたかったからね。でも具合よく事は進んだな。僕らは歌と演奏のレコーディング・スケジュールを分けたんだ。リズムトラックはチェルシーで、歌入れはニューヨークでって具合に(編者注:これは不思議なことではない―バンドはウェスト23丁目の悪名高いチェルシーホテルに滞在していた)。

仮のヴォーカル・パフォーマンスはかなり奇抜な唱法ですごく古臭かった。最初に聞いたときはかなりショックだったよ。奥底にひどく曲がりくねったような痕跡があるような。どちらかと言えばフルハウスは時代に乗り遅れていた。この純真さは今となっては魅力的だな。そう、ソングライティング精神とライヴが、真のストーリーを伝えている―エネルギーと情熱がパチパチと音を立てているようだ。

その頃の最たる中等品(?)のうちの一つは、どたん場でのリチャード作、Poor Will and the Jolly Hangmanのお蔵入り事件だ。実のところ、リチャード・トンプソンとジョー・ボイドの間に論争があって、結局作者がプロデューサーに自分の考えを押し切ったときには、見開きジャケットの初回分プレスは済んでいたんだ。もし君の持ってるアイランド盤の裏ジャケに、黒い四角のボックスに金色の曲のタイトルが印刷されていたら、それは最初の5000枚プレスのうちの1枚ってことだよ!スリーブノーツにはリチャードの面白い解説が載っている。中世のスポーツと、幻覚を起こさせるようなトルキーン(英ファンタジー作家)・スタイルで試合年鑑が載せてある。

スワブの犬はロッドドッグって呼ばれていた。まだよちよち歩きだったデイヴの娘、ステファニー・ペグは長髪のフォーク・ロック・グループ(僕らだ)と一緒に、実際にコミューンに住んで幼少期を過ごしたよ。彼女がそのろくでもない影響を受け続けることなく、今ではWOMAD(World of Music Arts and Dance:ワールド・ミュージックの祭典 〜'82 発起人はピーター・ガブリエル)の重要なポストについてることはうれしい限りだ。

今回の再々リリースで古巣のアイランド・レコードに戻ったわけだ。その上、所在不明だった曲と、今世紀のテクノロジーによってレコードよりもはるかに長時間収録が可能になったことで、当時の珍しいトラックも聞ける。シングルにもなった、リチャードとスワブの書いた聖歌(ほとんど霊歌)、Now Be Thankfulはステレオとモノラルで収録された。この曲は今でもフェアポートのレパートリーの一つで、人気の高いナンバーだ。B面には、ふざけ半分の見え透いた企てがあった。ギネスブック・レコードとして世界で最も長いタイトルを持った曲で、これはうれしい追加だね。当時録音されたものは、いろんなCDに収録されてきたけどこれは今回初めてだ。当時シングルとしては完全に無視されたけど。

ある種独特で、当時試したんだが8年間眠ることになったThe Bonny Bunch of Rosesは、いつか将来7,8枚目のアルバム・タイトル・トラックにしようとしてた曲だ。僕らはLAにあるフィル・スペクターの、フィル・スペクターズ・ゴールド・スター・スタジオで試してみようと思ってたんだ。The Bonny…の中の「ナポレオンのマラソン」ていうのは、ブリテン諸島と、彼の失敗についてのその傲慢さを表しているんだ。最後に惨めに死んだこともね。うーん、洞察力あるあと知恵えをもってしても、これはロネッツ向きとは言えないな。まぁ思いがけない発見ということで楽しんでほしい!

バンドは今なおCDを作り、ステージを踏んでいる。昔と同じように。世界中をツアーしてるけど、過去のことは画期的事件というより誇るべき遺産かな。もし僕らが出て行って全盛期の曲をそのままのアレンジで演ったとしたら、60年代の多くのバンドと同じような運命を辿っていただろうね。それは悲しいことだ。フェアポートはいつも前進してきたし、次のプロジェクトに向かってきたよ。ここにあるフルハウス全レコーディング集は、今ではひそかな誇りの源泉だ。前世紀の若かりし日々を思い出させてくれる。

もし君が古いファンクラブの一員なら、このCDがその時代へ連れて行ってくれるだろうと思う。もし君が若い世代で、グループの昔を体験したことがないならば、興味深くグループの歴史を発見することができるだろうと思う。曲の発展のプロセスとミュージシャンのそれもだ。

例年8月に行われるオックスフォードシャーのクロップレディ・フェスティバルで、このグループがリユニオンのために登場した時に(カレンダーの許す限りね)、目を閉じてみれば、白髪と薄くなった頭髪のことは忘れ去られて、音楽の持つスピリットだけが、今も昔と変わらず輝いていることを知るだろうと思う。

サイモン・ニコル/チッピング・ノートンにて―2001年7月


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