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バグパイプ

ュゼットは今から300年くらい前、17世紀末から18世紀中頃にかけてフランスで大流行した小さなバグパイプです。

「バグパイプ」という言葉を耳にすると、普通はスコットランドやイギリスのハイランドバグパイプや、物知りの人ならアイルランドのイーリアンパイプスのような民族楽器を思い浮かべるでしょう。(このイーリアンパイプスは、映画「タイタニック」の中で、アイルランド人達のダンスのシーンで使われていたのが印象的でした。)

バグパイプは民族楽器であるというイメージが強いのですが、実はこのミュゼット、バグパイプの中では例外的にクラシック音楽のための楽器として位置づけられています。
ミュゼットはクラシック音楽史でバロック時代と呼ばれる頃のフランスの人々を虜にしたのでした。

楽器
ミュゼット

の小さなバグパイプ、ミュゼットは、当時貴族の間で流行していた「野外での遊び」と呼ばれる、今のピクニックに似た催しの際にも彼らのダンスの伴奏をしたし、オペラやバレーといった劇場音楽の中でも「パストラーレ」と呼ばれる牧歌的なシーンによく用いられました。

ミュゼットはそれまでのバグパイプとは違い、空気を革袋に送る際、奏者の息を口を使って送る代わりに、ベルトによって腰に取りつけられた「ふいご」を使って送風しました。
このことで演奏する姿が優雅に見えました。

当時、特に宮廷の淑女達は、人前で何かモノを口でくわえる事などとんでもない!とされていたので、彼女達が演奏する事のできる管楽器としても人気を得ました。

18世紀に作られたミュゼットには象牙製の管、銀を細工したキー、そして革袋を覆うカヴァーには当時最先端のデザインによる刺繍や宝石などがあしらわれ、所有者にとってそんな高価で美しい楽器は何者にも代え難い宝物だったようです。

組曲の中の
ミュゼットという名の小品

ロック時代のフランスでは、王様であるルイ14世が自分自身で踊るほどバレーがとても好きだったので、劇場ではイタリアからフランス人に帰化した作曲家リュリなどによる宮廷バレエが行われ、メヌエット、ガヴォットなどを含む様々な舞曲がオーケストラによって盛んに演奏されていました。

劇場から宮廷の中に目を向けてみますと、劇場で踊られていた舞曲を数曲まとめて「組曲」という形にして、独奏や合奏で演奏されていました。
この室内楽や独奏曲の組曲は、たいてい踊りを伴わない形で演奏されていたのですが、その楽器編成には、フルート、リコーダー、ヴァイオリン、チェロに似たヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロなどが主に挙げられます。
オーケストラ用の組曲も、オペラなどから舞曲だけを抜き出され、ダイジェスト版としてしばしば演奏されていました。

そんなバロック時代の組曲の中に「ミュゼット」(Musette, Muzette) と題された作品を時折見かけることがあります。

実はこの「ミュゼット」とタイトルを持つ小品は、踊りからきた「舞曲」ではなく、楽器であるミュゼットの音を模倣した「性格的小品」なのです。

ミュゼットの音

ュゼットはオーボエやファゴットに使われるようなダブルリードを備えています。
ミュゼットの旋律を奏でる管はオーボエより短いので、このミュゼットの旋律管だけを鳴らしてみると、その音色はオーボエの高音域の音をかわいらしくしたような感じになります。

ミュゼット全体の音を性格付けているのは、バグパイプ特有の絶え間なく鳴り続ける印象的なドローンです。

他の楽器のために作曲された「ミュゼット」と題される小品には必ず低音パートにこのドローンの模倣が使われていて、この低音は「バス・ド・ミュゼット」(ミュゼットの低音)と呼ばれています。

当時、同じようなドローンを持つ楽器にヴィエール(ハーディーガーディー)という、弦を円盤で擦って音を鳴らす楽器がありますが、この楽器もミュゼットより一足遅れで宮廷で人気の楽器になりました。(ヴィエール(ハーディーガーディー)についてはこちらのサイトVielleux in Thailandに詳しく解説されていますのでご覧下さい。)

これらドローンを持つ楽器は、宮廷で使われ始めるまでは低い階層の人々の楽器とされていましたが、その天真爛漫で人をほのぼのとさせる音色は当時の貴族の人々をも魅了しました。

(ドローンについて、もう少し詳しく知りたい方は、
 ヴィエールのサイトVielleux in Thailandのこちらこちらをご覧下さい。)

量は、室内用の楽器なのでそれほど大きくはなく、チェンバロやガンバの伴奏付き独奏、そして他の旋律楽器とのアンサンブルのための楽譜が当時たくさん出版されました。

現況ではミュゼット奏者の数がそれほど多くないため、この楽器のために書かれた多くの作品はまだあまり演奏されていないのが実状です。ほとんどのミュゼット作品は、もともとのタイトルにリコーダーなどその他の楽器でも演奏できると示されていて、幾つかの作品はリコーダーのための作品として現代譜がすでに出版されており、それらは比較的容易に手に入ります。

「田園の楽器」ミュゼットの音色はナイーヴで愛らしく、時に滑稽だったりもします。
そんなユニークな音色を聴いていると、フランスバロック音楽に対して今までとは違うイメージを持たれるかも知れません。
みなさんも、機会があったら是非一度聴いてみて下さい。

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