アーティキュレーション、スタッカートのシステム

 バグパイプの発音の仕組みは、革袋に貯められている空気を押し出し、その空気の圧力によって旋律管とドローン管のリードを振動させることでなされる。絶え間なく鳴っているドローンは「音による背景」であり「音楽のための音」とは見なされておらず、演奏中に止む事はなく演奏の初めから終わりまで休符がある場合にもドローンは鳴り続けている。この時、旋律管にも常に同じだけの圧力がかかった空気が送られるので、"閉じられた旋律管" で無い限り、演奏中にどちらか一方の音だけを止めることは不可能である。(閉管のチャンターに関しては、主旋律管と補助旋律管の項目を参照して下さい。)
 つまりドローンが鳴っている間中、旋律管も鳴っていると言うことで、物理的には旋律管の音だけを止めたり切ったりできないということになる。ところが、ミュゼットではこの楽器特有の方法を使い、当時のバグパイプができなかった旋律や音の分断(アーテキュレーションやスタッカート)をメロディに付けることが出来る。

アーテキュレーション、スタッカートの実際

 主旋律管の一番下の指穴(右手の小指)以外の全ての指穴を閉じた状態を基本位置とする。この状態で革袋に圧力を加えると、この主旋律管からはソ の音が出る。ドローン管からもこのソ が出るようにレイェット(スライダー)を操作して音程を合わせ共に鳴らすと、この2つの音は溶け合いまるで1つの音しか鳴っていないかのように聞こえる。

主旋律管の音を変えるには、その音の指穴を開ける。例えばド を鳴らす場合、上から4つめの指穴(右手の人差し指)を開ける(これはボルジョンのタブラチュアー譜では「5」の番号に相当する)。すると、主旋律管のド とドローンのソ の2つの音が聞こえる。そして開けた指穴を閉じるとドローンの音に溶け込む。この動作、つまり開ける(メロディ)、閉じる(ドローンに溶け込む)を交互にすばやく繰り返すことで、同音反復がなされているように聞こえる。そして開ける指穴を変えてこの動作を行うと、その旋律がスタッカートに聞こえるという事になる。ちなみに、ミュゼットでは半音を出すためにクロスフィンガリングは使われず、全てキーで行われる。

指が基本位置の時に鳴っている音。

 旋律管(Chanter)で鳴っているソ は、ドローンの一番高い音とユニゾンであるため、それに溶け込みほとんど意識されない。


上図のように書かれている楽譜を実際演奏する時、旋律管では以下のように演奏する。

 

実際にどのようになるか下のQuicktime ムービーファイルを使って実験してみる。

 最初は旋律だけplayしてみて下さい。次に2番目のドローンと旋律、最後に2つのドローンと旋律を同時にplayしてみて、メロディーを聴き比べてみて下さい。

 旋律   
 ドローン
 ドローン

 チャンターで奏される音は「ドソレソミソ・・・」というふうになりますが、ドローンと共に鳴らすと旋律だけが浮き出て聞こえてきます。アーテキュレーションやスタッカートは、このように、ドローンとユニゾンである旋律管の と譜面上の音符との交替よってなされます。
 ここで、実際の曲「忠実な羊飼い」のソナタ2番のプレリュードを使って説明してみます。


楽譜にはこのように書かれています。
これを、ミュゼットの旋律管で奏したときの音を楽譜で表すと下のようになります。

赤く示した音符は副旋律管で奏される音で、これらが奏されているとき、主旋律管からはソ の音が鳴っています。
音を使って、旋律管だけと、ドローンと一緒に鳴らしたときとを聞き比べてみて下さい。

 旋律管
 ドローン

作品について

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