プレトリウスの閉じた旋律管とクローズ・フィンガリング

 
プレトリウスの「音楽大全」より


上図の旋律管の下部拡大図。
閉じた旋律管?

 プレトリウスの音楽大全に「ふいご付きバグパイプ」と掲載されているミュゼットの図をよく見てみると、プレトリウスは全く指摘していないのだが、旋律管の先の部分がコルクか木でできた部品によって栓をされているように見える。ここに描かれている旋律管が本当に閉じられているのだとすると、なかなか興味深い。
 先を閉じた旋律管をクローズエンディド・チャンター(close-ended chanter "閉じられた旋律管" )と呼び、現代でもイギリスのノースアンブリアン・スモールパイプス (Northumbrian smallpipes) やアイルランドのイーリアン・パイプス(Uilleann pipes)などの旋律管にこのシステムが使われている。この "閉じられた旋律管" では、指穴が全て塞がれている時、旋律管には1つも穴が開いていないことになるので革袋から送られてくる空気の逃げ場はなく、旋律管から音は出ない。そして、指穴を開けると空気の通り道ができてリードが震え発音する。指使いは全ての指穴を閉じる事を基本位置として、出したい音の指穴を開けるクローズ・フィンガリングが使われる。ミュゼットもクローズ・フィンガリングの運指法が採用されているが、管の先は閉じられていない。この "閉じられた旋律管" を持つ楽器ではミュゼットと違い、完全な無音状態を利用してスタッカートやアーティキュレーションを可能にしている。
 もし、プレトリウスのミュゼットが本当に "閉じられた旋律管" のシステムを使っていたとしたら、このタイプの旋律管を備えた最初期の楽器であるということになり、初期のノースアンブリアン・スモールパイプスとの関係を指摘できるかも知れない。


ノースアンブリアン・スモールパイプス

 付け足していうなら、この「音楽大全」の図版XIに描かれている Dudey というバグパイプは、楽器自体の大きさ、複数のドローンが一つのストックにはめ込まれているという点が、ノースアンブリアン・スモールパイプスによく似ている。いずれにせよ、初期のノースアンブリアン・スモールパイプスに、ふいごと "閉じられた旋律管" のシステムが導入されたのは18世紀のはじめ頃だろうと推測されており、ミュゼットから何らかの影響を受けたことはほぼ間違いない。

  
Dudey
プレトリウスの
「音楽大全」より

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