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ウソの情報の氾濫

 トマ:歌劇「夏の夜の夢」

指揮:ミシェル・スヴィェルチェフスキ
ポーランド・クラクフ放送交響楽団
出演者:アラン・ガブリエル、ギスレーヌ・ラファネル、ジャン=フィリップ・クルティス、セシル・ベズナール、フランコ・フェッラーツィア
演出・収録監督:ピエール・ジュルダン
制作:1994年5月7日、コンピエーニュ帝国劇場の収録


世の中、ウソの情報が多すぎる。

自民党、民主党、公明党、共産党、社民党……、
日本の政党が公表する党員数を足すと、
日本の総人口を超えてしまうらしい。

政党を二重、三重かけもちで登録する党員が多いのか、
政党が党員を水増しで発表しているのか、
どちらにせよこの数字はまったく信用できない。

もっと信用できないものは宗教界で、
各宗教法人が発表する日本の信者数を足すと、
日本の人口は少なく見積もっても3億人はいることになるという。

日本の骨格を支える政治と宗教の世界で、
このようなウソがまかり通っているから、
個人の分野のウソが日常茶飯事になるのである。

大阪では、「閉店セール」と広告を打った靴屋が、
「閉店セール」をはじめてもう10年目をむかえようとしているし、
利用金額に応じたポイント制度を導入する美容院が、
経営者は変わらず、店名だけが3回変わったという。

「赤ちゃんが乗っています」
というステッカーが貼られた軽自動車に、
おっさん4人乗っているウソは許せるが、
ヤクザの組事務所にずらっとならぶ高級車のすべてに、
「身体障害者等駐車禁止除外車」の標章が掲げられていることは、
なにか腑に落ちない。

旅行でフィンランドに行って、
日本を紹介した旅行ガイドを手にとると、
力士がUSJでアイスを食べているものや、
山伏が新幹線に乗っているもの、
舞妓がプロ野球を観戦している写真が掲載されていた。

確かに、力士もUSJで遊んだり、
山伏も新幹線に乗るかも知れないが、
それを「日本」として紹介してもいいものか、と思う。

以前、バンパーがぺちゃんこで、
タイヤもかたちをなしていない、
グチャグチャにへしゃげた車があった。

フロントガラスもバラバラに飛び散って、
どこの何という車種かもわからなくなっていた。

その横を自転車で通り過ぎようとしたときに、
車に「故障車」という張り紙が貼ってあるのに気が付いて、
思わずブレーキをかけ、
「どこが故障やねん!」と突っ込んでしまった。
明らかに「事故車」である。

街にはウソの情報が、氾濫している。

アンブロワーズ・トマの《夏の夜の夢》のDVDを、
インターネットショップで検索すると、
多くのショップの解説に、
有名なシェークスピアの原作に、トマが曲をつけた長編オペラとある。

先に結論を言うと、このオペラは、
シェークスピアの『夏の夜の夢』に曲をつけたものでは、断じてない。

シェークスピアの『夏の夜の夢』を読んだことがある人は、
最初に妖精が出てこないので気づくだろうが、
知らない人がこのオペラを観て、
「これがシェークスピアの……」と思い込むのは危険である。

なぜならば、このオペラはシェークスピア本人が主人公で、
酒を飲んでエリザベス1世にセクハラして、
恋するという話だからだ。

シェークスピアの『夏の夜の夢』を純粋にオペラ化したのは、
イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンのものであり、
こちらはアンブロワーズ・トマのものよりも一般的に有名である。

ちなみに、シェークスピアの『夏の夜の夢』に基づいた曲のなかで、
一番馴染み深いのは、メンデルスゾーンの「結婚行進曲」であり、
「結婚式で思い浮かぶ曲といえば?」
というと約9割の人が当たるだろう。

アンブロワーズ・トマ《夏の夜の夢》のショップ説明は、
多くのものが真っ赤なウソであるから気をつけて。


コンピエーニュ帝国劇場《夏の夜の夢》


コンピエーニュ帝国劇場《夏の夜の夢》


トマ:歌劇「夏の夜の夢」