芥川賞候補になった「豚神祀り」「春のたより」と表題作の「デンデラ野」が収録されています。三作品とも家族関係の闇が軽やかなタッチで描かれています。また、どの作品も短いこともありますが話が終結しないまま終わっており、闇の深さや闇の継続性が印象付けられます。軽妙で読みやすい文章で闇が描かれているため、全体が虚構の世界のようにも感じられる小説です。
明るい姥捨て山おすすめ度
★★★★★
父、母、姉、弟、おばあちゃん。よくある現代家庭が描かれており、ちょっと厄介者扱いをされているおばあちゃんが主人公です。このおばあちゃんのスタンスが面白い。家族に無視されていても動じない、特に悲しみも喜びもしない、腰の据わった冷静な観察者です。まるで家庭のなかにある姥捨て山「デンデラ野」から、家族の各人バラバラの生活をじーっと眺めているような。
特に深刻な事件も起こらず深刻な告白も無いのですが、おばあちゃんの目線でこの家族の日常を見ていくうちに、各人がなんとなくバラバラに生きていることの不思議さ、生活を共にしている家族が実はお互い見知らぬ他人であるような静かな不気味さが湧いてきます。
読みやすい文体で、まったく湿っぽさ・重苦しさが無く、からっとしていて面白く、実は怖い。