

『モン族の少女 パオの物語』
『モン族の少女 パオの物語』は、俳優として『青いパパイアの香り』
ゴー・クァン・ハーイ
[インタビューを終えて…ひとこと。]
ゴー・クァン・ハーイ監督 インタビュー
2007.4.25
東京渋谷シアターイメージフォーラムにて
TEXT:沢島正子
『夏至』などに出演したゴー・クァン・ハーイの監督デビュー作品です。
本作はベトナム映画の〈ゴールデン・カイト賞〉で、最優秀作品賞、
最優秀撮影賞、最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞を受賞しました。
日本では2006年11月の〈NHKアジア・フィルム・フェスティバル〉で
上映されました。
監督を目指して映画学校に入り、俳優からスタートした、というハーイ監督。
インタビューの部屋に入ると、くつろいだ様子のハーイ監督が
にこやかな笑顔でむかえてくれました。カジュアルな装いながら
さすが俳優としても活躍しただけあって、座っているだけで絵になる
スターのオーラに包まれていました。

――この映画を取るきっかけは?
:ドー・ビック・トゥイの短編小説を読んだ
時に大きな衝撃を受けました。この話は私の
小さい時の話を思い出させたのです。小説を
読んだ時に映画化したいと思いました。

――映画ができるまでにどのくらいかかりましたか
:ロケハンと準備、家などのセットを作ったり、
衣装を作ったりで3年かかりました。、実際の撮
影期間は49日間です。

――パオと母親の衣装がとても綺麗でした
:山岳地帯で数百年前から使われている手織りの
布を用意して、刺繍も各家々に伝わっている模様
を手で刺して、一着一着手作りしたたものが15着
その他エキストラになどにも50着程作りました。
色彩や素材は文化の反映ですから、昔ながらの伝
統を踏まえた服装にして雰囲気を出そうとしたん
です。衣装が出来た時に、モン族の90歳くらいの
おばあさんに「これは本物に似ていますか」って
聞いてみたら、私のおばあさんが着ていた服と同
じだと言ってくれました。

――この作品で監督がいちばん言いたかった事は?
:映画の中で私が言いたかったのは、全ての女性が
秘密を持っている、そしてその秘密は死ぬまで持っ
ている。パオはこの旅の中で、過去と現在の全てを
もう一回見る事によって、死んだと思った母が生き
ている事を知りますが、そのことを誰にも言わない
んです。パオは今まで暮していたのと別の世界に、
窓を飛越えて新しい世界に飛び出して行くんです。
わかってくればくるほど人間には深い深いルーツが
あって、行けば行くほどルーツに戻りたくなる。パ
オの場合はその行程の中に母を見つける、という話
なんです。

――パオの恋人(チュ)が笛を吹くシーンがあります
:笛とか口笛は、ベトナムの人が自分の心や魂を表
す表現のひとつです。チュと父親の吹く笛の音が実
は同じだった、というのは、父親と息子が同じよう
に実の母と娘を愛していた、ということも表してい
ます。

――パオが劇中で母親と歌う歌が印象的です
:昔の人にとって話すことは歌うこと、歌うことは
話すことなのです。あの歌は古くからある有名な歌
です。
――好きな音楽は?
:ロックとクラシック、バッハとかフランツ・リス
トが好きです。以前はビートルズが好きでした。村
上春樹がビートルズの事を書いているし『ノルウェ
イの森』とか『ねじまき鳥クロニクル』とか…。
今気になっているのは、20世紀末から21世紀に変わ
る時とか、世紀が変わる時に出て来る音楽が気にな
っています。世には認められなくてもいい曲があり
ますし…。

――この映画を見る方へ一言
:実際『パオの物語』は見やすい映画です。
俳優としたら好きな映画です。
他のベトナム映画よりはいいと思いますよ、
俳優はナチュラルだし(笑)。
――今後の予定は?
:次の映画は『コールドサマー』という作品です。
一人の青年が色々な熱い出来事に出会って変化して
いく物語です。もちろん映画の中にロマンティック
な場面もありますよ。

最後に、「日本に2回来たけれど時間がなくて、今度もっと時間をとる
ために東京に戻って来ます。この映画は是非まわりの方にも見やすい
映画なので見てね、と伝えて」と、とびっきり素敵な笑顔で話しを締
めくくってくれました。
[プロフィール]
1967年ベトナムのハイフォン生まれ。
ハノイ映画撮影学校卒業後、『青いパパイアの香り』(93)『シクロ』
(95)、『夏至』(00)などに出演。

『モン族の少女 パオの物語』
ベトナム・2006年
7月28日より、東京渋谷 シアター・イメージフォーラムにて公開
監督:ゴー・クァン・ハーイ
出演:ドー・ティ・ハーイ・イエン、グエン・ニュー・クイン、
ドー・ホア・トゥイ、リー・タイン・カー、グエン・テー・ホアン、
チャン・ドアン・チュアン
[あらすじ]
ベトナム最北部で暮らす少数民族“モン族”の少女
パオには二人の母がいた。子供に恵まれない育ての
母キアと、子供を産むために家に来た実の母シムだ。
パオと弟を産んだ後に家を出たシムにどうしても心
を開けないパオ。やがて成長したパオは青年チュに
心惹かれ、愛し合う二人は祭りに出かけるが…。
[みどころ]
主人公パオを演じるのは、ベトナム映画を代表する
女優で、ハーイ監督の奥様でもあるドー・ティ・ハ
ーイ・イエン。“モン族”の日常生活が、ちょっぴ
り懐かしさのある農村風景や、色鮮やかな民族衣装、
活気ある市場の様子などを通して描かれています。
パオの部屋の可愛らしいインテリアなど、ベトナム
映画がこれまでよりもっと身近に感じられます。
あまりに魅力的なハーイ監督に見つめられ、すっか
りキンチョー!して、まっすぐ目を見ることができ
なくて大変でした。インタビューの合間にカメラを
向けると、監督もビデオをこちらに向けてまわし始
め、思わずどっきり! 監督以外に俳優業は?とい
う問いかけに「今後3年間は予定がつまっていて無理」
とのこと。ちょっぴり残念ですが、デビュー作と思え
ないほど緻密で繊細さにあふれた美しい映像は、ハー
イ監督ならではの感性に満ちあふれています。こんど
はゆっくり日本にいらしてくださいね!