『拍手する時に去れ』
チャン・ジン監督インタビュー(8.30)

TEXT:阿佐美澄子


 韓国映画ファンはもちろん、出演俳優の名前ではなく監督の名前で観客を呼
ぶことが出来る数少ない映画監督のひとり、チャン・ジン監督が、<韓流シネ
マ・フェスティバル2007ルネサンス>内にて上映中の『拍手する時に去れ』
のプロモーションで来日しました。

今回、上映されているこの作品は、もともと自作戯曲として舞台で公演されて
いたものを映画化し、2005年に韓国で公開され観客動員数250万人の大ヒット
となった、殺人犯を追求していくヒューマンコメディといえる作品。映画
は、美人コピーライター殺人事件から始まる。48時間のテレビ生放送で、こ
の殺人事件捜査を完全生中継される中、検事(チャ・スンウォン)は容疑者
(シン・ハギュン)への執拗な尋問を繰り広げ、様々な職業の証人も登場す
るが、捜査は一向に進展しない。同時に生中継されている番組の視聴率も落ちて
いく。真犯人は誰なのか?事件は混乱を極めていく。
(今回のWEB POP ASIA では、インタビューの中から、映画『拍手する時に
去れ』について伺った話を中心にまとめたものを掲載致しました)


――捜査過程を生中継するという奇抜なアイデアは
  どのように生まれましたか?何かの記事を読んで思いつかれたのですか?
「特に奇抜なアイデアとは思ってないですよ。今はメディアが膨張している時
代なので、それくらいの事(このアイディア)は、ありえることなのでは?と
思います。視聴者の立場として、このようなニュース報道があれば、おもしろ
いのでは、と思ったのです。例えば、ニュースを見ていて連続殺人犯が連行さ
れるのを見て、その建物の中に入っていく姿を見ますよね、あの建物の中に
入っていってどのような事が行われているんだろう、と。とても知りたくなる
訳です。それを生中継で見られたら面白いんじゃないかな、見てみたいと思う
んですけど、それはある種のメディアに対する好奇心、我々が今生きている時
代がそういう時代なんだと思います」

――『拍手する時に去れ』というタイトルは、どのように生まれましたか?
「小さい時からよく聞いて使われている言葉からなのですが…。芝居をする前
に、こんな台詞が出てくるんです。“待っていたところでアンコールは出て来
ないから、拍手がなっているうちに去りなさい”という。観客から拍手をも
らったら拍手をもらっているうちに帰ってきなさい。という台詞からです」
――いつもタイトルが先に浮かぶのですか?
「そうです。ほとんどがそうです」
――『ガン&トークス』(原題『キラー達のお喋り』)も、そうですか?
「そう、タイトルのせいで、あのような映画になってしまいました。
いた仕方なく…(笑)。
あのタイトルがなければ、あの物語は書いてないですね」
――『拍手する時に去れ』もタイトルが浮かんで、
あの様な映画の始まり方(女性の死体の足裏のショットから始まる)と
終わり方(女性の死ぬシーンで終わる)をしたのですか?
あの冒頭の印象的なショットの撮影方法から、足裏から抜け出た霊魂が、
捜査過程を観ていたんだという風に撮ったのかと思いました。
「(笑)そんな風に見えましたか?そんな風じゃないですよ。
明確に意識した訳、意図した訳ではないですが、映画って、作る時にそこまで
緻密に考えて、そういう風に演出はしないです。見て頂ける方に色んな解釈が
可能なのが映画だと思いますね。そういう物だと思っています」

作品の製作について「そんなにいつも深く考えてはいない、
内容について楽しめないで作るのは良くない事だ」という。
何も考えない状況で作るのが楽しいことで、撮影は皆で楽しく作業し、
シナリオはひとりでこもって作るものだと語る。
作品を製作する上で大切にしている事だそうだ。

この映画の中で、ひとつの見どころとされている
検事役チャ・スンウォンと容疑者役シン・ハギュンの尋問シーンは、
どのように撮影されたのだろうか。興味深いところだが。
「この場面に関しては、台本が舞台とまったく同じものだったんです。大変長
い呼吸で演じられるものでした。演技で注文したというよりは、このシーンは、
エネルギーをひとつひとつ積み重ねなければならない場面なのでリハーサ
ルをたくさんしました。まるでひとつの芝居を作るような気持ちで、リハーサ
ルを積み重ねました」

この映画の特徴として、舞台を映画化したところもある。映画と舞台の演出に
おいて、違いや区別していることはあるのだろうか。
「演劇の場合は、色んな凝縮されたものがあったり、象徴的なものがあったり、
と。また過激な表現だったり奇抜な表現だったりというのが演劇のなかで
は可能だと思うし、想像力を豊かに表現出来るのが演劇だと思うのですが、そ
の反面、映画の場合は、より“リアリティ”を見せていくという事が必要に
なってくる。もう少し叙事的であったり精密であったり、と演出で見せなくて
ならないのですが…。今回映画では、ストーリーテリングの方の展開に気を配
りました。ストーリーテリングが重視される映画と、もっとステージでの舞台
的なものが重視される演劇では善し悪しがあるだろうし、そんな違いがあるん
じゃないかと思います」


インタビューの後日に行われたトーク・イベントでも
「映画と舞台、どちらに愛着を感じるか?」という問いにキッパリ
「舞台です。自分は舞台(演劇)出身なので、舞台に帰っていきたい気持ち
がある」といわれました。
来年3本撮影後、再来年は演劇へいく予定とのこと。
このインタビュー中も興味深い、舞台についての話も伺えたましたが…。
舞台について語る監督は、本当に楽しそうに前のめりで話をしてくれました。

自ら運営する映画製作会社「Film in SUDA」の名前の依頼を伺うと…。
(SUDA とは韓国語で“スダ=お喋り”)の意)
「すべては、そこから始まると思っていますよ。私達が作っている創作物とは、
すべてはおしゃべりから始まっていると思っています」といわれました。
真面目一辺倒なモノは嫌いだ。とはっきり言われる監督ですので、
作品同様にユーモアのある会話がインタビュー中もところどころに顔を出し、
人を楽しませることを忘れません。
次回作には、天国の話(ロマンチック・ヘブン)を4月公開予定で用意中だとか。
「死に別れた人達を描いたもので、誰にでも死は訪れる。
どんなに一緒にいたくても死で別れてしまう、でも天国で再び人生があるんだ」
という内容なのだとか…。
その後、史劇SFと天才を描いた作品を準備中。
浮かんだアイデアを2〜3年かけ、頭でグルグルとまわした後にようやく
作品として生み落とす監督の“おしゃべり”に、今後も耳を傾けていきたい。
と、期待で胸が高まるインタビューでした。


『拍手する時に去れ』
【韓流シネマ・フェスティバル2007ルネサンス】
内にて
全国順次上映中、詳しくはHP
http://www.cinemart.co.jp/han-fes2007/
をご参照下さい。

●2007年11月3日(土)〜11月9日(金)
北海道スガイシネプレックス札幌劇場
詳細は http://www.sugai-e.co.jp/cinema/cinema01.html

●2007年11月17日(土)〜11月23日(金)
イオンシネマ太田
詳細は http://www.aeoncinema.co.jp/oota/

●2007年10月27日(土)〜11月2日(金)
ジョイランドシネマ沼津
詳細は http://www.joyland.jp/

●2007年10月13日(土)〜10月16日(火)
シネマスコーレ
詳細は http://www.cinemaskhole.co.jp/

●2007年10月20日(土)〜10月26日(金)
安城コロナワールド
詳細は http://www.korona.co.jp/Main/index.html

●2007年10月13日(土)〜10月19日(金)
大垣コロナワールド
詳細は http://www.korona.co.jp/Main/index.html

●2007年11月25日(日)〜11月28日(水)
シネマプレックス小倉
詳細は http://www.kadokawa-cineplex.co.jp/kokura/

●2007年11月24日(土)〜11月30日(金)
宮崎ピカデリー
詳細は http://www.nakamegane.jp/~m-picca/