
孤独な王子 ●ポーカーフェイス●
錦戸亮は嫌いだ。
いつも澄ましたポーカーフェイスが嫌い。
いつも冷めた態度が嫌い。
最も、錦戸に対して嫌悪感を抱いている自分も、嫌い。
「ねぇねぇ!このクラスで一番かっこいいと思う人って誰?」
「それは、やっぱ赤西君じゃない?」
「えぇ?やっぱ錦戸君だよぉ。」
「うちも錦戸君!」
「私は亀梨かな。」
「私は錦戸君に一票!」
はぁ、とため息を吐く。
ついて行けない。
私はそう思って
静かにその場を立った。
何故か私のクラスは
学年でかっこいいと騒がれる人が
見事に集まった。
(赤西、錦戸、亀梨、山下、大倉……)
でも私は、そいつらを好めない。
否、錦戸が好めない。
赤西とか亀梨とかはさ、
誰にでも笑顔でいつも素だし、
明るくて馬鹿で、でもかっこよくて
人気が出るのはよくわかるんだ。
山下は誰もが認めるイケメンだし。
大倉は目立たないけどかわいくて
愛されるキャラクターだと思うし……
けど、なんで錦戸なんだろう?
その5人の中で、
一番人気が高いのが錦戸だ。
いつも無口で冷静で冷たくて、
何考えてんのかわかんないし毒舌だし、
顔はヤクザ顔で怖いしさ?
なのに、なんであいつが一番モテるんだろう……
友達が言うのは
「女はギャップに弱いの!」
だそうだけど。
嫌いだ。
自分隠してかっこつけるような奴は。
錦戸はいつも自分を出さない。
否、十分出しているかもしれないけど、
あいつはいつもポーカーフェイスだ。
すんごいムカつく。
いつか、その皮を剥いでやりたいと思うくらい。
でも関わりたくはない。
関わって、あの女子の輪に入るのは御免だ。
そう、思っていたから
私は男子とのかかわりを持たなかった。
授業に出るのが嫌いで
青空が綺麗な日はだいたい、
立ち入り禁止の屋上でサボるのが好きだ。
今日もその扉を開け、
給水タンクの裏に隠れて
ウトウトと眠ろうとしていた。
…………のに。
「あ、なんや、先客おるやん。」
声がして眠たい目を必死に開けて
顔をあげてその声の主をたどると
大倉が立って、私を見下ろしていた。
「……折角、屋上の入り方知れたんに………なぁ、亮?」
大倉だけかと思い安心していたら
大倉は後ろを見てそう言った。
大倉で見えなかったけれど
そこには不機嫌そうな顔の(いつもかも。)
錦戸亮がいた。
最悪……………。
「…どうする?亮。」
「どうするも何も、他にサボる場所なんてあらへんやん。」
私をものすごいヤクザ顔で睨む錦戸。
ようするに、私が退けと?
「まぁ、ええか。どうせ亮と一緒なら2人でも3人でも同じやな。」
私が何も言えずにいる間に
二人はとんとん拍子に会話を進め
私の近くにドスッと寝そべった。
大倉はまだいいとして
なんで錦戸とこんな近距離でいなきゃならないんだろう?
私は立ち上がって、
そこから離れようとした。
「なんや、さん。行っちゃうん?」
大倉の声がして彼を見れば
眠たいのか、目も開けずに言った。
「だって、2人がいるでしょ。うちは他でもいいし。」
私はその後の大倉の言葉も聞かず、
梯子を降り、屋上のドアまで行き、
ドアを閉めたふりをして
給水タンクから死角の
屋上の隅っこに寝そべった。
あまり変わらないかもしれないけど
少しでも錦戸から離れたかったし、
屋上の暖かい空気を手放したくなかったので
私はそのまま眠りについたのだ。