Peter Schmidt


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ピーター・シュミットという名前を挙げて、ああ、あの人かと了解する人はそういないと思う。決して有名とは言えないこのイギリス人の画家は1冊の画集も残さないまま、3年前の冬、急死してしまった。

生前、彼とイーノはかなり親交を深めていたらしい。イーノのアルバム「テイキング・タイガー・マウンテン」(74年)「イブニング・スター」(75年)のアルバム・ジャケットは彼による物で、また「ビフォー・アンド・アフター・サイエンス」(77年)には彼の絵が4枚つけられていた。このアルバムのサブ・タイトルは「14PICTURES」となっているが、これはアルバム中の10曲に彼の4枚の絵を併せて一つの作品、そういう意味に違いないと思う。話が前後するが、他にイーノとの関係で言えば'75年に2人の共同作業でできあがった、「OBLIQUE STRATEGIES」があげられる。これは簡単に言えば、インスピレーション・カードのようなもので、百数十枚でワン・セットになっている。このカードがどうやって作られたか、それは彼らの活動の背後にある法則、その観測報告なのだそうだ。
 
 ピーター・シュミットの描く一連の水彩画は自然物を対象にしたものが多い。窓から見える隣家、雨にぬれた屋根、山、雲…。つまり、彼の描くものはどれも日常の風景なのだが、それは典型的日常ではなく、彼の目に映る、いわば蒸留された自然風景なのだ。彼は自らを「見たものを描けない画家」と称していた。最後に、彼はこれまでに数度個展を開いているが、そのショウは、イーノの作曲した音楽がエンドレスで流れ、客は歩き回ることなく気に入った場所でいすに腰掛ける、という極めて静かな雰囲気のものであったらしい。

(宝島 83年10月号   安斉 儒理さん)

      

 


 


「Main Stream  vol.10」 '80.3  に、Main Stream誌と、ピーター・シュミット氏が、渋谷・ナイロン100%で氏の展覧会を行うように準備を進めている手紙が紹介されています。枠内がシュミット氏からの手紙と、編集部のコメントです。しかし、氏は80年1月に心臓マヒで急死してしまいました。

 

 

eveningstar.jpg (4886 バイト)

 

 

この前の手紙で話してくれた場所のことだけど小さな展覧会にはぴったりみたいだ。
でも写真があった方が助かるけれど。ともかく必要なのは壁以外にはカセットプレイヤーといいスピーカーだけ。


9月号のインフォメイション覧でほんの少しふれたピーター・シュミット展に関して、その後話はどうなったのかとの問い合わせ、手伝いたいので連絡を、等など若干の反響があった。シュミット氏と何回か手紙で連絡を取り合ううちに希望的観測が私たちの間に成立、具体的な話も少しずつ決まり始めている。彼は展覧会の会場はなるべく小さな所、人が歩き回れるような所ではなく座って落ち着けるような所を探して欲しい、と言った。彼の絵はとても小さく、一番大きい物でも50×70p位、らしい。

 

ところで、絵の方は額に入れては送らないつもりだ。運送費が高くつくし…。だから丈夫なカードの上に絵を固定して送るようにする。今までにもこの方法で3回無事に展覧会をやったから、大丈夫だろう。今度のこの話をクリスチャン・ネフィーに話したんだ。彼は JPL Fine Arts のメンバーで僕ともロンドンのギャラリーで一緒に仕事をしている男なんだけれど、彼は日本にこのテの仕事をしている誰かを知ってるらしい。
展覧会が開かれている間は誰かに必ずそばについてもらうようにして欲しい。理由は2つ。まず、絵をガラスで覆ったりしないので、絵はとても傷つきやすい状態にある、と言うこと。次に、音楽はずっと流しておかなくてはいけない。これは重要。要するに、人が会場に入る前から流しておくんだ。誰かが入ってきて、それからテープを流すのとでは全く違った感じになるからね。使用する音楽はブライアンが作っている新しい曲をいくつか。まだ日本では誰も聞いていない曲。それを、絶え間なく、静かに鳴らせておくんだ。

 

何通か送られてきた手紙には、どれにも小さな自分の絵を入れてきた。雨にぬれた屋根、雲、果物…。どれからもひんやりとした空気が感じられるようで、それはまるで抵抗なく飲み込める蒸留水。
やはり頑丈なガードで隔離された、ガラス越しのピーターシュミットの絵など想像はできない。バックに使うというイーノの曲も、彼の絵もAmbient Stuffだ。彼は展覧会に使うというこの音楽にとても気を使っている。この前によこした手紙にも同じ事を書いている。そしてAmbientには自分の絵、イーノの音楽、のほかにさらにもうひとつ、を加えるつもりらしい。そのもうひとつとは…

 

ブライアンが最近日本に行ったかって?そうは思えないな。もっとも行きたいとは言っていたけど。最近日本に彼の作ったVIDEOテープをいくつか送ったんじゃないかな。いまは、今度一緒に2月にブリュッセルで開く展覧会のためにブライアンは香水を作っているんだ。多分TOKYOでも使えるようになるよ。


かすかなにおいのする展覧会。これは彼とイーノのアイディアらしい。彼の話によればイーノはPerfumeと、それを作ることにとても興味を持っているとのことだ。この香水が使われるのはおそらく今頃ブリュッセルで開かれているショウが始めての場だろう。
ところで、イーノが日本に来たか否かという質問の理由は、少し前にそういう噂が流れ、イーノが某誌編集部に突如現れ講義をしていった、とまで言われたからである。ピーター・シュミット展には関係のない質問だった。

 

さて、まず、ショウの日を決めなくっちゃ。僕はブリュッセルでのショウにかかりっきりになっていると思うから、3月より前というのは無理だけれど。
詳しいことはまた次の手紙で。なるべく早く返事を、いつか君たちに会えるといいな。

 

 

 


 


以下に4枚の絵をならべていますが、見るのに若干時間がかかると思います。
実物は縦がそれぞれ29センチぐらいの物です。

 

 

 


schmidt1.jpg (20181 バイト)


"The Other House"


 

 

 


schmidt2.jpg (19833 バイト)

 
"Look at September, Look at October"

 

 

 

 


schmidt3.jpg (19819 バイト)

   
"Four Years"

 

 

 

 

schmidt4.jpg (19934 バイト)

  

"The Road to the Crater"

 

 

 

 


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