ENO:
AMBIENT

 


「DISCREET MUSIC」「MUSIC FOR AIRPORTS」 のライナー・ノーツで、

ENO自身がAMBIENTについて述べています。

また「ON LAND」 では  “AMBIENT”SPEAKER SYSTEM について書いています。



DISCREET MUSIC


BRIAN ENO  December 1975

 

私は今までいつだって、計画を行動に移すのよりも、計画を練ることの方が好きだった。だから私は、いったん動き出したら後はほとんど干渉せずとも音楽を作り出せるおうな、そんなシチュエイションやシステムに興味を抱き続けてきた。いってみれば私は企画者やプログラマーの役割に停まり、その後は聞き手として自分の音楽演奏を楽しみたいと思っていたのだ。

この興味を満足させる2つの方法がこのアルバムに示されている。「DISCREET MUSIC」は、この問題に対する技術的なアプローチであり、もしこの作品の楽譜に比すべき何かがあるとすれば、それは私がこの作品の制作に使用した特定の装置のため操作用ダイヤグラムであるはずだ。この構成の中心をなしているのは、1964年テープレコーダーの可能性に気づきはじめていらい、私が実験を重ねてきたロング・ディレイのエコー・システムである。 

この装置を組み立てることで、私の音楽への関わりは次の2つに限られることになった。(a)インプットを与える(ここではデジタル記憶系に蓄えられた異なった長さをもつ、2つの簡単で調和しやすいメロディ・ライン)(b)時折、グラフィック・イコライザーによってシンセサイザーのアウトプットの音色を変化させる。

訓練次第では、この受動的な状態を受け入れ、ちょっと手を出したり干渉したりして芸術家を気どるような傾向をなくすこともできるだろう。ここでの演奏の場合、私が作っているのは、ロバート・フィリップと私の計画したコンサートで、彼のギター演奏のために用いる、単なるバック・グラウンド・ミュージックでしかないことが救いだった。将来の用途といったものがそれであり、一方私が元来「斬新的な進展」と言ったものを好む性質があったために、この作品の中で人を驚かすようなものを作り出したり、予想のつかない変化を作り出したりすることはせずに済んだのだ。私は聞くこともできるが、おそらく無視することもまたたやすい音楽を作ろうとしていたのだろう。ちょうど「夕食時のナイフやフォークの音と混じる」ことのできる音楽を作りたいと考えていたサティと同じ精神で。

 今年の1月に私は事故にあい、たいしたけがではなかったが、ほとんど身動きの出来ない状態でベットに寝ていなくてはならなかった。そこへある日、友人のジュディ・ナイロンが18世紀のハープの曲をおさめたレコードをもって見舞いに来てくれた。彼女が帰った後で、私はかなり苦労してレコードをかけた。横になってから、アンプが非常に低いレヴェルでセットされていて、ステレオの一方のチャンネルからは全然音がでないのに気が付いたのだが、起きあがって直すなんていう元気もなかったため、レコードはほとんど聞こえないような音でプレイされた。

 このことが私に音楽の新しい聴き方を教えてくれた。それは光の色や雨の音が環境の一部であるように、音楽も周囲の環境の一部として聴くことだった。私がこの作品を比較的小さな音で、しばしば聴覚の限界を下回るくらいの小さな音で聞くようにすすめるのは、このような理由による。


北村昌士さん・鈴木布美子さん   どうも

 


 


MUSIC FOR AIRPORTS

BRIAN ENO   September 1978


ある環境における背景要素として特に考案された音楽のコンセプトは`50年代、Muzak lnc.により提唱され、以来総称的には“Muzak”の名称で知られている。この語は、Muzak lnc.により、低くそして派生的な方法でアレンジされ、オーケストラ用に編曲された音の素材を用いて特別に統合されたもの、という意味をも持つ。理解し易く言うなら、これが識別力ある多くのリスナー(そして多くの作曲家)に、環境音楽のコンセプトは注目すべきアイディアである、という事を完全に忘れさせている。

過去3年間、私は包囲物としての音楽の効用に興味を持ち続け、どのような妥協的方法をとらずとも使用できる音楽を制作することは可能であると信じるようになった。この分野での私個人の実験と、レコード音楽に貢献する多様な御用達の作品との差違を明確にするために、私は“Ambient Music”という語を用いている。

包囲とは、環境、あるいは外的作用と定義されるひとつの色調である。私の目的は、限られた時間と状況のために、小規模ながらも多方面にわたる環境音楽のカタログを作りあげながら変化に富む雰囲気と環境に適応するという視点のもとに表面的に(排他的にではなく)オリジナルの曲を作ることにある。

そして温存するレコード会社は、聴覚的、雰囲気的な特異性を覆うことを、環境の調整の出発点としている。“Ambient Music”はこれらを強調する。そのために、普通のバックグラウンド・ミュージックは音楽から疑問、不確定性(つまり、すべての真のおもしろさ)を取り除かれて、作られている。“Ambient Music”はこれらの性質を、なお備えている。そこでこの意図は、刺激を与えることによりこの状況を有望にすることである。(こうしておそらくは決まりきった手順への倦怠が軽減され、身体のリズムの自然の上昇と下降は一様となるであろう)“Ambient Music”は平穏、そして思考の空間を導くものである。“Ambient Music”は特別の強要なしに、聴取の際の多くの注意の度合いに適応するに違いない。興味深さと同時にそこには無視の可能性が存在するのだから。

 

訳:安斉儒理さん   どうも

 

Muzak(ミューザック):レストラン,待合室,事務所などに流す
有線のバックグラウンド音楽放送。1950年代にMuzak社が
開発したことからこの名が付いた。

 


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