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interview 1980 Sept


 

 

9つのメディアの提言

 

 

1、Break The Routine   慣習を破る

 

 16歳の時、イプスウィッチ(*1)にある美術学校に通いはじめた。私はふつうの画学生のように筆やパレットをつめたカバンを持ち、花や裸婦を描き、解剖学や色彩論を学ぶつもりでいた。しかしそこは、当時イギリスでもっとも革新的な学校だった。
 最初の課題は、生徒それぞれの心理的性格を決めるというもので、私達は2カ月間、自分本来の性格とまったく逆の立場で行動するよう言われた。私の性格は衝動的で脈絡がなく、精力的で権威主義的だったため、控え目で規律正しい男、言われたことのみをていねいに実行するという新しい性格を与えられた。そのうち、クラスメートが私の実行度が不充分だといって手押し車に私を乗せてしまったため、行きたいところへさえも自力で行けないという始末だった。もちろんこれば単なる遊びだったが、私は非常に多くのことを学んだ。
 人間の思考は、様々な習慣、禁止、条件反射、自動的、機械的行動、日常性などに導かれている。しかし、一方でこれらのものから自由になることも可能なのだ。生きた精神とは、つねに刷新されつづけるものなのだ。
 私は友人とよく“習慣破り”をして遊ぶ。行動が決められるやいなや、それから逃れようとするわけだ。規則を感じたら、単に何が起きるかそれを知るために、反対の方向で考えてみる。すると、しばしばおもしろいことが起こる。たとえば技術的な分野で、使用説明と逆のことをすると、いつもとても興味深い結果が出てくる。テープレコーダーやコンピューターでもやってみたし、今、ビデオでそれをやっている。

*1 ブライアン・イーノが育った街。ロンドンから北東へ80q

 

 

2、Take the Advantage of Chance and Errors   機会と失敗を利用する

 

 ミュージシャンが行き詰まった時とか、納まるべぎ部分が納まらず全体のバランスがとれないような場合、また、外からの干渉がある時、誰でもその対処の姿勢を思いがけない方向へと転換せざるをえなくなるものだ。すばらしい、“機会”というものは習慣さえも打破する。歓迎されざる状況から生まれた新たな要素を無理に消毒するかわりに、その要素を考慮し、発展させていくわけだ。
 このような心の運動を発達させるために、友人であり画家のピーター・シュミットと一緒に『オブリック・ストラテジー』というカードゲームを作った。ジレンマに陥ったらカードを一枚引き、そこに指示された方向に沿って行動してみる。そうすることによって習慣化された思考法から離れることができ、失敗だと思い込んでいたものが実は新たな発展への鍵でもあることが見えたりするわけだ。

 

 

3、Think with Diagrams  図表を使って考える

 

 あらゆるアイディアは、図表または幾何学的な絵によって表現することができる。これは、複雑な状況を見渡すためにたいへん明解た方法だ。それぞれの要素は線として形成され、それらの線が交錯することで状況が浮かび上がってくる。口で説明するのと比べて、図表は、パラメーターを変化させたり、新たに加えたりすることによっていかに状況中が変化するかを予測する、ひとつのオープン・システムなのだ。
 音楽を図表で表現することは、構造を変化させたり予期せぬ展開を与えるためにはどんなプロセスを使ったらいいか考えるのに役立つ。
 図表は美しい。より正確にプロセスを描写すればするほど、より優雅にデリケートになっていく。

 

 

4、Don't Allow Yourself to be Bewitched by Complixity and Technology
   “ 複雑さ ” と “ テクノロジー ” に魅了されてはいけない

 

 私はテクノロジー狂ではない。使いはするが決してそれ以上ではない。それは感情と具体的能率の問題なのだ。
 私は、技術面での難度を崇拝する傾向を持つ現代芸術や、最新のテクノロジーと戯れることで知性を証明といったことを嫌悪している。最近のコソクリート・ミュージックがおもしろくなくなっているのも、音楽家が“複雑化”に魅せられて、真のリズムや音のうねりを忘れているからなのではないだろうか。今の私にとっては自然な楽器に魅力を感じる。ジェームス・ブラウンのエレキギターのリフを30分と聴いてもあきないが、シソセサイザーの同じメロディーを30分も聴かはしない。

 

 

5、Keep on Popular Art    ポピュラーなアートを保つ

 

 これは私がもっとも努力していることだ。シリアスな前衛芸術家にとっては呪われてしかるべきたのだが……。私はレンガの壁に一人向かって話したくはない。もし私が誰かを歓ばせることができなかったり、理解されなかったとしたら、それは自分の方法、が間違っているか、ミスをしたのだと思う。私自身不平がないわけではないが、現代の中心的音楽であるロック・ミュージックの近くにつねに身を置くよう努めているのはそのためであり、ロックが私のレールでもあるのだ。

 

 

6、Believe in Art,in its power to influence Reality   芸術とそれが現実に及す影響力を信じる

 

 11歳の頃から、芸術は私の知識における中心体系だった。それを通じて、世界が、私がどう動いていくものかを学んできた。
 今、私はそれは正しいことだと確信する。芸術と日常生活、科学、宗教の間に分離のないアフリカやアジアの文化の中に、私と同様な考えを見い出したからだ。

 

 

7、Persuade by Senduction rather by Aggression  攻撃より誘惑に負けなさい

 

 芸術のもっとも重要な機能のひとつは、魅力的な世界をかいま見せてくれることだ。たとえば柔かい美しい音楽は幸せな状態を暗示している。それは現実から逃避する方法だと考える人もいるが、それどころか私には、世界を変貌させるとても力強い方法だと思え合。存在や美の表象に対することで、私達は現実の欠点やゆがみを測ることができる。そして現実と幸せなビジョソの間にある障害物を取り除く方法を考えたりもできるわけだ。

 

 

8、Build up Network  ネツトワークを組みたてる

 

 私にとってニューヨークに帰るということは、友達に会えることだ。特にディヴィッド・バーンやジョン・ハッセルに…。彼らなしでは話す人がいないも同然なのだ。それに、話すことは私にとって不可欠のものでもある。討論の場で自分の考えを表明したければ、進歩は望めない。話し合っている間にひとりでは考え着かなかったアイディアを発見したりするわけだ。刺激し合い、交換し合える関係を作ることのできる人を見つけるのは並大抵のことではない。これは私の夢だが、あらゆる分野に渡るアーティストたちの共同体をつくり、何かプロジェクトを実現させる、これは実際不可能に近いこともわかっている。ニューヨークにいる私の友人たちは、この夢にもっとも近い人々といえる。

 

 

9、Carry Your Own Cultur with Yourself  自分自身の文化を持つ

 

 私は、アフリカやその他地球上のすべての文化の各部分を寄せ集めて豊かな混合ロック・ミュージックを創り出すのが好きで、その目的のために真剣に他の文化を学んだりもする。しかし、インドに渡ってグルーとともに生活するなどということはしないだろうし、ドラムを習うためにアフリカの小さな部落で一年過ごすということもしない。私は自分の過去を捨てたくはない。西洋の芸術的伝統を愛しているし、それを切り離したくもない。
 実際私は、つねに自分の文化を持ち歩いている。それはいつも私の頭にあるし、大切な本はつねにスーツケースの中に入っている。
(*2)
 レコードやカセットは本よりも頻繁に内容が変わる。でも、孤島にひとり流されるとしたら何を持っていくか?私はよくそれを考える。
(*3)

 

*2 それらの本は、チベットの哲学者チョギャム・トルムパによる『The Myth of Freedom』と『Cutting through Spiritual Materialism』 ジョン・ミラー・シェーノフによる『African Rythm and African Sensibility』 スタンフォード・ビアーズの『The Brainof the Firm,Managing Cybanetics of Organization』C・H・ウェリントンの『The Strategy of Genius』

*3 そのリストは『TheGreat Learnjng Paragrph Seven』by Cornelius Cardew (イギリスの作曲家)『Discreet Music』by Brian Eno 『Earth's Greatest Hits』(これは私とジョン・ハッセルとで地球上のあらゆる音楽を集めて作ろうと思っている実在しないレコードで、もうひとつ作ろうと思うのは,バッハのチェロ・ソナタのゆっくりした部分ばかり集めたもの。『ln a Silent Way』 by Miles Davis『Buddy Holly's Greatest Hits』 かもしくは 『Compilatjon of Shirelles』(これらは私が12歳の頃聴いていたもので,孤島で年老いていくのなら青春を思い出させるものがあってもいい、これらの曲には「That's Rock! A diary !という感覚がある。)

 

 

From the Interview by Jean-Francois Bizot/In New York 1980 Sept.
Issue
 Vol.3 bV 1983.5.1 構成・金坂留美子


(segawatakuya)