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interview 1976

 


 

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日本の場合、生き方の底辺の様な物が全然無いんです。だから僕は、表向きに、社会的にはつい闘争的になって行かざるを得ないんですよ、あなたは外面的にすごく静かな人ですけれども、内面にはすごいものがあるんじゃないですか?

 

今のようになるにはすごく時問がかかった。以前は、特にロクシーと一緒にいた頃はものすごく神経が高ぶていて闘争的になっていたよ。こういう風になるには、かなりの時間がかかった、日本でも同じだと思うけれど、特にミュージシャンの世界ではものすごく有名になるか、無名でいるかどちらかに限られるんだ。ロンドンのミュージシャンは、なんとかトップに立とう、商売的にも有名になろうという意志を持っているからね。そうすると、どうしても入間は闘争的になってしまうでしょ。イギリスには何百っていうプロのフットボールのチームがあって、それが第1ディヴィジョンから第10位まで各リーグごとに10グループあるのかな。それが毎年入れ変わっているんだ。ミュージシャンの多くがトップの第1ディヴィジョンにいようとするから焦るし闘争的になるんだろう。私はトップに居なくてもいいんだ、第2ディヴィジの一番上に居ればいいような静かな気持ちです。

 

アナザー・グリーン・ワールド一のライナー・ノーツを書いたんです。その時にイーノは、サイボーグ・ジャガーっておもちゃ、それだって風に書きました。どうしてかって言うと、僕自身が生きていく上で、例えば人と人との関りの中でつい情を求めたり感情で接したりする訳。それを断ち切ったところでイーノというミュージシャンが生きてるんじゃないかって気がしてそう書いたのだけれど、どうですか?

 

それを解かってくれる人がいて非常にうれしい。私は長い間、人に認められる為にいかに音楽で人にショックを与えるか、そんな方向に進んでいたからその音楽は大変、闘争的であり、煽動的であっただろうし、だけど、その時点はもう卒業して、私が人に音楽を与える時には、その音が全く認められなくても構わないんだ。

 

僕もシンセサイザーを持っています。ある人からシンセサイザーは勝手に音が出るじゃないかって言われたんですか、その時は、自分の個性を出し得ると思っていて腹を立てたんですよ。でも良く考えてみれば、別にシンセサイサーは勝手に音が出ていいんだし、自分の個性なんて本当にちっぽけなものだって感じがした訳。

 

シンセサイザーという楽器は大変に人を驚かす、そして自分も驚く音が出る楽器でね、人を何とか驚かしてやろうと思えば簡単な事。そして自分も驚いてしまうから自分が今弾いているのは自分だけの新しいものだという錯覚に落ちいるけれど、それは誤りなんだ。この楽器の持っている悪点でもあるんだ、けれどね。例えば道を歩いていて、何とか人に認めてもらおうと思って顔を真赤に塗って歩いたら、簡単にみんなが見てくれるでしょう。この楽器を使いこなすには、人がその音がシンセサイザーでないと否定できるくらいの程度で使うのが一番いいんじゃないだろうか。何とか静かに驚かさないように使うのが本当だ。

 

オブスキュアの中のあなたの曲に、“慎重な用心深い音楽”(ディス・クリート・ミュージック)というのがあるでしょ。あれはそういう所から付けられたのですか?

 

ディスクリートという言葉自体は、今の時代にはあてはまらない言葉だろうね。これはオールド・ファッションなイギリス人の観念で、なんとかして入に気持ちの良い印象を与え、なんとか人に丁寧で異和感を与えないようにというのが、その意味なんだ。私があのアルバムで言おうとした事は、部屋に音楽がかかっていても意識しないで、しかももし聴く人がインヴォルブしようとすればそう出来るというような音を作り出そうとしていた事なんです。

 

以前NHKでインタヴューに答えて、ブラック・マジックよリも科学の方に興味があると言われたそうだけど、やはりそれは出来るだけ人間の欲望とかそういうものから逃げ出したい為?

 

ええ、言いました。その時言いたかったのは、音楽家にはミステリーを作り出そうという人が多いけれど、私はミステリーを超えたミステリーを実証していく科学の方に興味がある。

 

じゃ、例えば人の死というものも、そんな幻想も科学で実証が可能だと思いますか?

 

私は死というものについて余り考えた事が無いけれど、文学的な死よりも科学的な死の方に興味がある。私が死を表現するとしたら、生きているという事は体の隅々まで、緊張している状態で、死というのはそれが総て無くなった虚脱した状態だと思う。死は、唯人間の死だけではなく、社会とか国とか何にでも緊張感の無いという事は全部、死だと思う。

 

よく解かります。そんな状態は僕も嫌ですよ。

 

(本を取り上げて)この本を書いた科学者はスタフォード・ベア。色々なものを、音楽でも国際政治でも分析する場合に総て、一つの言葉で表現出来る、結局同じだと言っています。彼はそういう言葉を創る人で、自分の科学について様々な所で講義するんだけれど、その対象は警察学校の学生であり、政治家であり、法律家であり、−−−−どんな人達に対しても一つの言葉で話の出来る入なんだ。そういうものに私は非常に共鳴しています。去年は私自身、色々な所で彼の言葉に沿って講義したんです。彼の用いる表現で音楽のことについてね。

 

じゃ、今一番影響されている人って言うとその方ですか?

 

ええ、その講義をする迄、彼に会った事がなかったのに私の講義内容を手紙に書いて送ったら、それに大変印象づけられたという返事をくれて、それ以来の付き合いですよ。彼と今やってるのは、私の書楽知識と彼のサイバネティックスの知識を一緒にしてエッセイを書く事だ。

 

イギリスの方?

 

彼はインドの生まれで、ヨガを30年間、学んだらしい。チりの前首相だった人と懇意で彼がアドバイザーとして、色々な知識を与えていたわけです。でもCIAにその方が殺されてしまったので、今はウェールズの田舎に住んでいます。(写真を見せて)これが彼が指導者と一緒に働いていた時の会議堂で、この部屋は彼のデザインであり、政治家にも農業をやってる人にも使えるし、あらゆるものが一目瞭然と解かるシステムになっている彼の科学を導入してるんだ。18ヶ月間使われたんだそうだよ。私達の住んでいる世界は、すごく混沌としていて、もっと整理しなければならないからこのシステムを使えばなんでも雑然としている為に起こる問題が片付くと思うな。
音楽にしても、若いミュージシャンがいいものを持っていてもその表現が雑然としていて、その良さっていうものが失なわれてるんじゃないかな。だから一つの科学的な用語を使う事でみんなが互いに表現しようと思うものが総ての人に解かるようになれば、そういった混沌とした状態は随分片付くんじゃないかしら。

 

音楽の話に戻るけど“アナザー・グリーン・ワールド”の時のあなたの詩は余り好きじゃない。大変、人間臭い感じを受けるんです。あなたにはもっと透明感のある静かな音楽をやっていって欲しい。

 

それは解かる。私があのアルバムの詩を書いた時は、今の状態に移る過程であってどうしてもそういうのを通らないといけなかったんだと思う。今はそういうものに対して愛着が無いけれど以前はね。

 

安心しました。僕も静かでいて力強い人間に成りたいというのが一つの夢みたいで。

 

それは大変に難しい事だよ。そうなろうと思って努力する事自体、大変アグレッシヴな事だからね。

 

次のアイランドからのあなた自身のアルバムは、いつ出るんですか?

 

しばらくは音楽以外の事をしたいと思っているので、新しいアルバムの予定は無いけれど、来年の4月頃になるかもしれない。(2号の相関図オブスキュアのアルバムを指して)これと、これと、これと、これの4枚のアルバムは1年半前に作ったレコードなのに、今頃になってすごく売れ行きがいいんだ。どうも色々な人たちが私の一番初めのレコードを聞いて、私の音楽を理解し始めてくれているようだね。だから今急いで新しいアルバムを出して人を混乱させたくないんだ。イギリスの人達は、私の音楽をすごく難解なものだと思っているみたい。4枚がそれぞれ異ったものなので理解するのに時間が要るんじゃないかな。

 

キング・クリムズンに居たロバート・フリップの事を聞きたいんだけど。

 

ああ、彼ならよく知ってる。彼も私と同じ様に音楽から離れて、色々他の事を考えたいので音楽活動をやめているんだ。2週間後にはこっちに戻って来るよ。心配しなくても1年後には、彼は素晴らしいものを持ってレコードで表現するだろうから待っていて欲しい。(陶器を指さして)水をあれに入れてると猫が飲むんだ。3匹、猫を飼ってるよ。

 

(琴を触わっているのを見て)朝起きて、それをポンポンと鳴らしてると落ち着きますよ。

 

私はすごい早起きなんだ、、どちらからいらしたの?東京?

 

いいえ大阪ですよ。京都の近くの。

 

そう。昔から京都へは行きたいと思ってはいるんだけど、どうせなら自分で旅費、を出すよりレコード会社に出してもらった方がいいと思うから。東芝は、まだ出すって言ってくれないんだ。(笑)

 

じゃ、菊地さんに言っておきますよ。(笑)

 

それはいい。何か自分のレコードは余り日本では売れないから来て下さいって言わないみたいで。

 

日本の文化では、どんなものに一番興味を持っておられますか。

 

私は日本の文化の中で佗(わび)に一番関心があります。佗の境地に入りたい。私の音楽の中に佗のフィーリングを入れたい。

 

解かります。もうそれを感じてます。

 

私は何か一つ大切なものだけを入れた音楽を作リたい。沢山にあれもこれもというのはアメリカ的な考えで、無駄を除いた、一つだけ残すというのが東洋の伝統的な哲学じゃないんでしょうか。

 

今、あなたが京都にいらしてもおそらくがっかリするでしょう。本当の日本の部屋は畳と壁だけで何もないって部屋なんだけれど、今、僕の住んでる所は机がガタガタとあったリして。そういう風に生活がアメリカナイズされてますから。

 

ええ。機会がある毎に記録映画などで東京とか大阪の大都会の様子を見るから知っているよ。充分、予想できる事だ。

 

私達は佗とか寂とかいう言葉は知っていても使わないんです。僕がこちらに来て街ですれ違う日本人を見ると、大変悲しい気持ちになる。あなた達が日本人を見て大変滑稽な所とか、ふと気付く所があれば教えて欲しい。直したいし。

 

ここに住んでいると日本の観光団体のバスが沢山通ります。そしてみんな沢山カメラを持ってる。まるで何も見のがすまいとしてイギリスの文化、ヨーロッパの文化をなんとかしてそのカメラの中に入れようと必死だ。日本人の生活は、アメリカナイズされていて何でもかんでもアメリカのもの、ヨーロッパのものが良いという傾向があるようだけど、こちらに居るインテリジェンスのある、本当に解った人達はもっと深い東洋のものを集めて身近に置いているよ。

 

ええ。だから私もこちらに来て、東洋を見るという感じになるんです。

 

まだ日本には、昔からのひなびた風景とかが残っているの?

 

少しだけね。奈良と京郁の少しはずれた所に。奈良がいいでしょうね。日本へもしいらっしゃった時には私が御案内しますよ。

 

ええ。大変、観光客が多いらしいから私一人では、そういうものを捜し出せないだろうしお願いします。(大正琴を弾きながら)パーカッショナルでとてもいい楽器だね。すごく繊細な楽器でしょ?

 

オープン・コードで、ここを押さえていけば・・。

 

ああ、私もそういう風にギターを弾いてるんだ。(ギターを取って)これはとても古いギターでロクシーの一枚目のカバーに写ってた奴なんだ。9年間使って一度も弦を取り換えた事が無い。古<なると音がとてもソフトになって好きなので換えないんだ。もう一つの部屋を見て欲しい。もっと佗的だから。

 

“アナザー・グリーン・ワールド”のカバーの写真は、ここで撮ったんですね。その絵はどなたが描いたの?

 

デヴィッド・レルフという人。イギリス人だけど、まだ有名では無い、私も5年間、絵を学んだんです。(数枚の絵を取り出し)私の一番好きな絵で、彼の先生だった人のものだ。彼のテクニックは本のぺ-ジの上に描いで、あちこち活字を残して置くんだ。テイト・ギャラリーに彼の作品が3枚ある。絵でありながら、詩でもあるでしよ。
彼が、アナザー・グリーン・ワールドの絵を描いたんだ。イギリス人が面白いのは、物事をすごく複雑化する傾向があるでしょ。今、歴史が始まって以来の12進法が10進法になったり、ECに加入する為にメーター法にしたり、温度を摂氏にしたり。でもそんな必要は無いんだよね。

 

日本も一時そうだったね。尺とか、貫とか。

 

例えば12進法の方が音楽にも適しているでしょ。10進法じゃすごく忙しい。あぁ、ごめんなさい。そろそろリハーサルに行かなきゃならないので。

 

長い間、時間戴いてどうもありがとう。こちらに当分いらっしゃいますか?来号を送りたいので。

 

ええ、いますよ。本当にこの琴ありがとう。とってもうれしい。

 

何か小さな詩でもいい、メッセージ戴けますか?あなたに会えて本当に幸せです。これからもあなたの音楽で何かを教えていって下さい。

 

本当に私もあなたに会えてうれしかった。コンサートにいらっしゃったら、終わった後で会いましょう。さようなら。

 

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(7月16日、MAIDA VELLAの自宅にて)

 


  by hataeno )