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interview 1975


 

eno75.jpg (19562 バイト) ロキシー・ミュージックを去って以来、ソロ・ミュージシャンとして、アレンジャーとして華々しい活躍を続.けているイーノ。ニュー・アルバムのプロモーションの.ために、ニューヨークを訪れた彼をインタビューする機会があったが、日本からのファンにぜひみてもらいたいと、わざわざハッピを羽おって出てきた。ピンクのベレ一にそのベレーの色とほとんど変わらないような、白いノーブルな顔。おもちゃのギターを手にもって、何やら流球音楽のようなメロディーを弾き、「これ、日本の音楽だろ?」とおどけてみせる。ステージでみせるそこはかとない色気とは別の、男性的な魅力いっぱいのイーノである。

 

 あなたはテープ・レコ一ダーに大変興味をもっているという話をききましたが。どんなきっかけからなんですか?

 

 僕は8歳の時からずっとテープ・レコーダーにあこがれていて、16歳の時に初めてそれを手に入れたんです。まず自分の声を吹き込み,スピードを上げたり、ゆっくりまわしてみたり、テープの切り貼りをしたり逆まわしをしたり、とにかくありとあらゆることを試みてみました。それがたまらなくおもしろくて病みつきとなり、すぐに2台目のテープ・レコーダーを買いました。それ以来、ことあるごとに買い続けて、一時期は31台も持っていたけれど、皆んなにやったりして今は15台です。テーブ・レコーダーのない僕の生活なんて想像できません。

 

 でも、テープ・レコーダーを駆使した音楽というのは、そのままそっくりステージで再現できないというハンディキャップがあるのではないでしようか?

 

 そう、大変むずかしいことです。でも僕はステージでレコードをそっくり再現なんてことには興味がないんです。僕のもっている音楽に対する観念は、スタジオで録音するためのものであって、ステージのことは考えていません。今、2〜3考えていることがあって,そのひとつは、大変仲の悪い2人のミュージシャンを、テープを使って共演させるということ。もうひとつは、楽器のチューニングをわざと狂わせて演奏するということです。ふたつとも、ずいぶん危険な実験でしょうね。もしうまくいけば、画期的な音楽が創造できるでしょうし、失敗すれぱ徹底的にお粗末なものになると思います。ステージではやりたくありません。なぜなら,怒ったファンがビンやナイフを投げつけるのは必至ですからね。

 

 イギリスのミュージシャンの中には,実際にレコーディングを担当したプロデューサーやエンジニアをコンサート・ツアーに同行させて音の充実をほかっている人たちがいますね。

 

 僕の考えでは、ひとつの音楽を創造する過程において、それにかかわってくる人が多すぎると、いろんな段階で音楽を制する観念が消えてしまう傾向にあると思うのです。そういう人々の音楽は、僕にとってもやりにくい。なぜなら、いつもミュージシャンが4人いて、ひとりずつ何をやっているかがわからなくなってしまってはいけません。僕は彼らを押さえつけはしませんが、皆んなで互いにコントロ一ルしあって、グループの団緒を意識しているのです。ミュージシャンのステージをみて、その人のすべてを感じとるのは、僕にとっても意義深いことです。しかし、その陰で、誰かが余計な操作をしたり、音を加えたりしているのがわかると、興味が半滅してしまうでしょう。すべての操作には余り感心しませんね。誰もが他人のやっている音楽がわかるような原始的な状態にもどろうとしているかのようです。

 

 私は2年前にあなたがロキシー・ミュージックにいた時のコンサートをサンフランシスコでみましたが、予想外にがっかりしたんです。それは、サンフランシスコだったからつまらなかったのだと思うのですが。

 

 それも理由のひとつでしょう。2年以上も前のことなので、サンフランシスコにはロキシーの音楽を受け入れる環境がなかったからです。ウエスト・コーストのファンは、レイド・バックしていて、ブルージーで、どちらかというとあきあきするような音楽が好きで、会場をゴロゴロしながらポットを吸っては、ウォーと歓声をあげているだけです。そんな雰囲気の中に、僕たちのアップタイトな(緊張した、都会的な)、おかしなアクションのグループが出てきても、彼らが受けつけてくれないのは当然ですよ。特にあの日はスティーヴ.・ミラー・バンドの前座として出演したので、まったく毛色の違った僕たちのことを余計なものだと思ったのも無理からぬ話でしよう。

 

 ニューヨ一クの観客はウエスト・コ一ストの観客と異なっていますか?

 

 もちろんです。そういった意味では、ずっとソフィスティケイトされていますよ。

 

 最近、プロデューサーとしてはどのような仕事をしましたか?

 

 ポーツマス・シソフォニア(Portsmouth Symphonia)という若いミュージシャンたちのオ一ケストラです。彼らはクラシック演奏家ですが、楽器は弾けないんです。

 

 楽器を弾けなくて、どうやって演奏するのですか?

 

 それが狙いなんですよ。弾けないけれど、いっしょうけんめい弾こうとしている。そこが音楽としておもしろいんですね。彼らのアルバムは、もう2枚もプロデュースしました。その他、ジョン・ケイルのニューアルバムも彼といっしょにブロデュースしました。

 

 ロバート・フリップとは、大変仲がいいんですか?

 

 ええ、2年前に初めて会ったのですが、会ったとたんに気が合ってしまってね。同じマネージャーのもとで仕事をしていたということもありましたが、彼は当時僕がやっていた電子楽器の研究にとても興味をもっていました。僕はそれを知って、“僕のスタジオに来ればもっとおもしろいものをみせるよ”といって彼を誘い、その場で、アルバムを作ろうということになったのです。2人がうまくやっていけるのも、ひとつの音楽を創造する過程程で、2人がまったく違った領域を担当しているからです。ロバートは原則的に音楽的な面を受け持ち、僕が電子技術、音質などに関する面を担当しているのです。電子楽器以前は、一人のミュージシャンが出せる音の種類というのは、せいぜい15種類で、それを様々に組み合わせて音楽を構成していました。今日では、もし僕にエレキ・ギターを持たせたら、僕は40万種類ものサウンドを作り出す自信があります。これは、全く新しいジャンルですが、ほとんどの人々はその存在をまだ知りません。彼らは昔のままの旋律の限界でものを、考えようとしているのです。

 

 友人としてのロバートはどうですか?

 

 ええ、皆んなも知っているとおり、彼は変人なのでなかなか親しい友人は少ないのですが、僕とはとてもうまく行っています。僕も変人なのかな?(笑)それに、ロバートは僕が前に住んでいた女性と出歩いているので、僕らは、つまり、ある意味で共通のものをもっているんですよ。

 

 小説や詩はどのようなのが好きですか?

 

 サミュエル・べケットが好きです。ウィリアム・バローズも大好き。ホルヘ・ルイ・ボルゲスなどですがが、詩はそんなに読みません。たまに読むのは、マシュー・アーノルドやイエーツです。両方ともあまりモダンなものは好きではないのですが、ノン・フィクションが大.好きなので、暇な時はたいていノン・フィクションを読んでいます。

 

 好きなロックの作曲家は誰ですか?

 

 ケヴィン・エアーズです。彼のもっているロック・のアイディアというのは、計り知れないものがあります。それと、ノイ、クラスター、ハーモニアなどのドイツのグループがすばらしいです。

 

 最近の若い人々は、クラシック・ミュージックをあまリききませんね。

 

 そうですね、クラシックはのろくてたいくつですしね。自分の生活のぺースを少し変えたい時にはいいでしょうが。クラシックが作曲されていた時期というのは、レコードなどありませんから、演奏をききに行く人たちの大部分は、死ぬまで同じ曲をきく機会は2度となかったのです。それで作典家は、観客が音楽を理解できるように、ある程度テーマのくりかえしを必要としたのでしょう。それに比べて、レコードで何百回となく聞けるロック音楽は、クラシックのようにくりかえしていたのではすぐにあきられてしまいます。そのために、ロックは攻撃的で変化に富んだ演奏でおもしろいのです。

 

 あなた自身はクラシック音楽は好きですか?

 

 好きですが、好きな理由が変わってるんです。クラシックは複雑な構成だから好きなんです。もうひとつの理由は、他のロック・ミュージシャンが、クラシックを取り入れる方法がどうも気に入らないんですよ。たとえば、エマーソン・レイク&パーマ一は、どうしようもないバンドですね。彼らが日本で大変人気があるのはよく知っているので、こんなことを言うと僕の人気にさしつかえるでしょうが、真実だからはっきり言いたいんです。

 

 ロキシー・ミュージックを去った理由は、ブライアン・フェリーとの仲たがいが原因だとききましたが。

 

 そうです。彼とはステージでもオフ・ステージでも、うまく行きませんでした。でも、ロキシーから抜けたた理由は他にもいろいろありますが、自分ひとりでやりたいことが山積みしていて、ロキシーのメンバーとしてて活動できなくなったことが主な理由です。僕は四六時中同じことをくりかえしやるということに耐えられない性格なので、ロキシーのように、毎晩毎晩,、似たようなコンサートで同じ曲をそっくり演奏するなんて、気が狂いそうですよ。僕は、たとえば六つのことを一度にやっていなければ気がすまない性質なんですよ。同じ領域で長い間仕事を続けていれば、その中で自分が感.じることのできる対象というのは、どんどんせばまってくるばかりです。最後には、自分の鼻先しか見られなくなるのがおちです。

 

 先月、ロキシー・ミュージックをニューヨーークのアカデミー・オブ・ミュージックでみたのですが、あれはまるで、ブライアン・フェリー&ヒズ・バック・アップ・バンドのようなものでした。

 

 それも、僕がロキシ一に興味を失なってしまった原因のひとつです。むろん、ブライアンのことは好きですが、だからといってもう2度といっしよに演奏する気はありません。ロキシーのフィル・マンザネラとは今でもよく行き来しているし、ジョン・ケイルや僕のニュー・アルバムもプロデュースしているんです。彼はとても聡明な男だし、エゴのない偉大なギタリストだと確信していますよ。

 

 好きなミュージシャンは誰ですか?

 

 フィルだろ、もちろん。フリップ、ジョン・ケイルなどいっしょに仕事をている人ほとんど。好きだからいっしょに仕事をするんだからね。(笑)ケヴィン・エアーズは絶対、僕の一番好きなミュージシャン。それほど多くの人に認められていないのが残念だ。

 

 


 Music Life 1975.2  (インタビュアー:水上はるこ さん)